日本人と英語

赤ちゃんは大人より努力家

2020年1月31日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「赤ちゃんは言葉をどう学ぶのか」からテーマをいただいて議論をしていますが、第二回目のテーマは、「赤ちゃんの努力」についてです。

前回の記事で、赤ちゃんが「母語習得の天才」であるという事実については確認をしましたが、今回は大人から見ると彼らはその「天才」に甘んじてなんら努力をせずとも、100%の確率で母語獲得ができてしまうのではないかという疑念について見ていきたいと思います。

これに関して言うと、私も以前から自分自身の講演などでかなり明確に主張してきたトピックがあります。

それは、「赤ちゃんであること」についての認識です。

大人がいくら言語の天才である「赤ちゃんのよう」に英語を学ぼうとしても、すでに大人は「赤ちゃんではない」ため、赤ちゃんのようには学べないと認識しなければならないということです。

そのあたりの説明については、私がいつも講演の中でしている表現と、本書の中での著者の記述が非常にに通っていたので、まさに我が意を得たりという感覚を持ちました。

以下、該当部分を引用します。

「そもそも赤ちゃんは周囲の人の話し声の中にどのような単語が含まれているかも全く知らないところからスタートします。たとえ大人でも知らない外国語での会話を聞かされてその中から単語を見つけなさい、などと言われたらうんざりすると思います。赤ちゃんは音のつながり方を手掛かりにして、単語を自分で見つけていきます。確かに単語はいつも同じ音の形をしているのだから、この方法は王道です。王道なのだから大人にも使えないはずはありません。しかし、そういう気持ちで大人の私が、よく知らない外国語のおしゃべりを横で聞いて単語を見つけ出せた試はありません。それでもそうし続けるしかないというのが、まさに赤ちゃんのおかれた状況です。大人との最大の違いは赤ちゃんはそこから逃れられないということです。」

私は、自分自身の講演で、「赤ちゃんが母語を学ぶ」ということは、言語のジャングルの中を、穴に落ちたり、猛獣に襲われそうになったりと様々な障害をお母さんという最良の伴奏者とともにさまよい続け、三年くらいかかって、ようやくその全体像をつかむことで脱出することだと言っています。

ここでのポイントは、赤ちゃんはこのジャングルから途中退場できない代わりに、最良の伴奏者であるお母さんがぴったりとくっついてくれる状況でこの困難から逃げずに(逃げられずに)ほぼ100%の確率で脱出に成功するという点です。

それに対して、大人は、途中で母国語の世界に逃げ出すという選択肢を持っています。

そして、逆を言えば、母国語を習得してしまっている大人は、やる気さえあれば、「文法」という論理の力を使って、近道を見つけることができるのです。

私は、この文法の知識のことをジャングルの「地図」だと例えています。まだ、母国語を身に付けていない赤ちゃんはこの地図を利用することができず、ただひたすらさまよう中で全体像をつかむしかないのです。

どうでしょう、ここまで説明してもあなたはまだ、赤ちゃんがその「天才」に甘んじてなんら努力をせずに母語獲得できると主張しつづけますか?

私は、それは赤ちゃんに大変失礼なことだと思います。(笑)

 

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