日本人と英語

小泉八雲の音の表現に関する解説

2021年5月30日 CATEGORY - 日本人と英語

前回より書籍紹介ブログにてご紹介した「ラフカディオ・ハーンの英語教育」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目のテーマは「音に関する表現」です。

前回の「色」では、ラフカディオ・ハーンが、その講義の中で表現における日本語と英語の「差」を的確に指摘されていることを取り上げましたが、今回、「音」に関しては、日本語と同様、学生がその表現の多彩さを理解できるように感覚に即して丁寧に解説してくれていることを取り上げたいと思います。

以下、その言及部分を引用します。

「Sounds are spoken of as LOUD and LOW. Give an example of a loud sound and a low sound. The sound of cannon is loud. The humming of bees is a low sound. Sounds are called HIGH and DEEP. Thunder is a DEEP sound and the sound of trumpet is a HIGH sound. Why do we say DEEP?-All sounds which are both low and powerful are sounds which seem to shake the ground like the force of wavers in a storm. Some men’s voices are called DEEP. Sounds which are very HIGH and also very powerful are called SHRILL. The sound made by sparrows and by semi, and the sound of a steam-whistle on an engine are all SHRILL. Sounds are called HARSH and SWEET. Disagreeable noises are called HARSH. The sound of flute and the voices(sometimes) of children and women are called SWEET. But the word SWEET may also be used for some deep sounds-such as the tones of a fine bell. There are sounds still HIGHER than shrill sounds, – which hurt the ears; we call such sounds KEEN and SHARP – as if we were talking of knives or needles. Sounds are also called DEAD and DULL. These are sounds that do not ring, that do not make echoes. They do not travel. Striking a log of wood makes such a sound.」

この英語にも例によって以下のような日本語訳がありました。

「音はLOUD(大きい)とLOW(低い)で表します。LOUDとLOWの使い方の例を挙げてください。大砲の音はLOUDです。ミツバチのブンブンと唸る音はLOWです。音には、HIGH(高い)とDEEP(深い)があります。雷はDEEPな音であり、そしてトランペットの音は HIGHな音です。 なぜ、DEEPというのでしょう? 低くて力強い音はすべて嵐の中の大波に似て、大地を揺るがすような音だからです。男性の中には、その声が DEEP(深みのある)と呼ばれる人もいます。 とても高く(HIGH) て力強い音は SHRILL (甲高い)と表現します。雀や蝉の鳴き声、 蒸気機関車の汽笛もすべて SHRILL です。音は、HARSH、SWEETと形容し、耳障りな音を HARSH と表現します。フルートの 音や、ときには子どもや女性の声を SWEET (甘美)といいます。しかし、SWEET という語は、ほかにも何か深い音-例えば美し い鐘の響きのような音にも用いられます。甲高い音よりさらに高い耳をつんざくような音も存在します。それはまるでナイフか針について話すかのようですが、そんな音を KEEN (耳がキーンとする)とか SHARP(金切声)と表現します。 音は、DEAD(死んだ音)とか DULL(鈍い音)とも表現します。これは、響かない、 こだましない音のことです。これらの音は遠くまで届きません。丸太をたたくときにこのような音が出ます。」

ただ、今回も少し理解に苦しむ部分がありました。

しかも今回は前回のように日本語訳に問題があるということではなく、英語の原文自体に理解しにくい内容があるような気がします。(もしかすると、ラフカディオ・ハーンの原文ではなく、ノートを写した学生に問題があった可能性もあるかもしれません。)

それは、冒頭の「音はLOUD(大きい)とLOW(低い)で表します。」という部分です。

実際の講義では、「音量」に関する表現なので、LOUD(大きい)の反対は、LOW(低い)ではなく、「SOFT/QUIET(小さい)」とされていたのではないでしょうか。

そうであれば、次に続く「LOW」と「HIGH」との対比がよく分かります。

本書の解説にはその指摘はありませんので何とも言えませんが、「LOW+powerful」が「DEEP」で、「HIGH+powerful」が「SHRILL」という具合に非常にうまくつながるからです。

とはいえ、ご覧のように日本語での感覚でそのまま理解できそうなものもあったり、そうでないものもあったり、それよりなにより英語の音の表現も、日本語での多彩さに負けず劣らず様々な表現があることが分かります。

これらを一つ一つ丁寧に実例と対比しながら解説するラフカディオ・ハーンの熱意に脱帽です。

 

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