aとtheの観察
2021年10月13日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語 最後の学習法」からテーマをいただいて書きたいと思います。
本書はそのタイトルに「最後の」とあるだけあって、どれもこれも完全に同意することのできるきわめて合理的な方法を紹介されていましたが、その中でも私が最も感心したものを一つだけ取り上げたいと思います。
そのテーマは「aとthe」です。
このブログにおいては「冠詞がもつ論理」をはじめ、今までも何度も定冠詞と不定冠詞について取り上げてきましたが、本書における説明はそれらと比較しても群を抜いて分かりやすいだけでなく、例示が極めて網羅的でした。
そのため、どのように切り取ろうかと悩みましたが、ほとんどそのまま以下に抜き書きさせていただくことにいたします。
皆さんの中にaとtheの使い分けが得意だという方はおそらくいないのではないでしょうか。僕も、この仕事をするまでは苦手でした。でも今ではほぼ100%の確率で正しく使う自信があります。それは徹底的に『観察』したからです。英字新聞のエディターの仕事の一つに、校正があります。記事を読んで間違ったところがないかどうかチェックするのですが、校正の際にaとtheが出てくるたびにしるしをつけて、なぜそこはa/theが使われているのかを考えるようにしました。その結果、学生時代に学んだaとtheの使い方のルールが身に染みて分かってきたのです。冠詞の使い方のように複雑な文法は、基本のルールだけ覚えても完全には理解できません。こうした『観察』を繰り返すことではじめて身につくのです。
それでは次のエクササイズで観察の体験をしてみましょう。
いかがでしょうか。
私たちが「基本のルール」として習うのは「話に初めてその単語が出てきたらイメージは共有されていないのでa、すでに登場済みでイメージが共有されているのならtheを使う」というものです。
しかし、これですと例えば「taxi」という単語を取り上げた場合、その単語自体のみに着目してしまいがちです。
私が本書の解説が素晴らしいと思うのは、この「taxi」という単語だけでなく、「driver」「cab」「door」についてもそれらに関連する「taxi」が既出であることからイメージが共有されているということが明らかなため theを使用することを指摘していることです。
私は正直ここまでかゆいところに手の届く解説を見るのは本書が初めてです。
ただ、一点だけ、「⑧ keep the change (お釣りは取っておいて)は、決まり文句として使っている」だけは冠詞の使い方のルールに照らしてというにはちょっと無理があるように気もしないでもありませんが。
とは言え、全体としてはそんな小さなケチがどうでもよく思えるほど、非常にすばらしい「観察」眼だと思います。