日本人と英語

「Are you finished?」の謎

2021年7月18日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の『なぜ』2」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目の今回のテーマは「be動詞+過去分詞」です。

「過去分詞」の活用としては大きく分けて「完了」と「受動態」の二つがあります。

そして、「完了」は「have + 動詞の過去分詞」、「受動態」は「be動詞+他動詞の過去分詞」とするというルールがあることは英語学習者は皆知っていることです。

ですが、私はアメリカ留学時代、このルールに合わない表現が結構頻繁に出てくることに驚かされました。

それが、「Are you finished ?」という表現です。

日本語で「もう終えた?」という文脈で使っていることは間違いないのですが、当時の私は、Have you finished ?と聞き間違いではないか?といつも疑問に思って、聞き直すのですが彼らは確かに「Are you」を使っているのです。

この理由を彼らに正しくは「Have you finished ?」ではないかと問い詰めるのですが、彼らは「そうともいうけど、Are you finished ?でいいんだよ。」ということしか言ってくれません。

もちろん自分でも辞書や文法書をあたりましたが、この問題に触れているものを見つけることはできず、結局今までその理由を確認できずに来てしまいましたが、遂に本書の中にこの理由に触れられている部分を見つけましたので、以下に引用します。

「英語にはwinter is gone and spring is comeのようなやや古風な言い方があります。これは古英語でcome/ go/ riseなどの(移動を表す)自動詞を『be動詞+過去分詞』という形で使い、完了した状態(be)を表した言い方が今に残ったものです。しかし、finishは14世紀、『終える』という意味でフランス語から英語に入ってきた外来語で、古英語由来の動詞ではないので、この理由を当てはめることはできません。英語辞書もこのfinishedは扱いかねたとみえ、言い方は悪いのですが、たいてい形容詞という説明で逃げていて、その由来については触れられません。この不思議な言い方はアイルランド英語由来と見られます。アイルランド英語では完了した状態を表すのに『be動詞+自動詞の過去分詞』という言い方をとてもよく使います。証拠にアイルランド系の作家フランク・マコートの『アンジェラの灰』という作品にはgoneが49回現れ、beを使った完了が46回、haveを使った完了が3回と圧倒的です。これはアイルランドの現地語であるゲール語には『have + 動詞の過去分詞』という英語の現在完了にあたる形がなく、完了を表すには英語のbe動詞にあたる語を使うからです。アイルランド英語には『have + 過去分詞』という形で入るはずの完了形が『be動詞+過去分詞』という形と混じりあって入ったようです。具体的にはI tried my other shoe and was finished dressing.のwasをhadに変えて読むと、I tried my other shoe and had finished dressing.となってするりと読むことができます。ただし、元のwas finished dressingはhave finished dressingと比べて、意味の重点が靴ひもを結び終えた、その完了した『状態』にありますから、意味は同じではありません。アメリカ英語はアイルランド英語の影響を強く受けているので今ではイギリスよりもアメリカでよく見られる表現になっています。」

まあ、ここまでのアイルランドとの関係を踏まえた英語の歴史にまで踏み込まないと理解できないわけで、アメリカ人の友人をいくら問い詰めても、「そう(have)ともいうけど、Are you finished ?でいいんだよ。」としか答えられないのも無理はありません。

これからは安心して堂々と「Are you finished ?」も使っていこうと思います。

 

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