日本人と英語

be to 構文は「いいかげん」な文法である

2025年2月25日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「一度読んだら絶対に忘れない英文法の教科書 」からテーマをいただいて書いてきましたが、今回が最終回です。

最終回のテーマは「be to 構文」です。

She is to study Spanish.

受験勉強ではおなじみでありながら、実際の生活ではほとんど使われない文法項目の典型であるこの「be to 構文」ですが、一般的には次の五つの意味のいずれかを表すと言われます。

will (予定・意志)

can(可能)

should(義務)

shall(運命)

そして、しばしばテストで「ここで使われているbe toは次のうちどの用法なのか答えなさい」というような聞かれ方をします。

しかし、著者はこの設問は絶対にやってはいけない、なぜならこれは出題者がこの「be to 構文」の本質を理解していないことの証拠になってしまうからだと言います。

以下になぜこのような設問が不適切なのかを「be to 構文」の本質を明らかにすることで解き明かしている部分を本書より要約引用します。

「be to 構文の始まりは、1066年のノルマンコンクエストにまで遡ります。これはフランス北部のノルマンディー公ギョーム二世がブリテン島を征服しイギリス人を支配下に置いたことで始まります。ノルマン人がイギリス人を支配する形となるわけですが、古フランス語があまりに複雑な文法をしていたので、ブリテン島の民衆には全く普及しませんでした。そのため、ノルマン人は文法が簡単な古英語と古フランス語を混ぜながら支配するようになります。(これが中英語が成立した理由です。)その際に、古英語にすでにあったbe going to, be able to,be supposed toといった 『be 〇〇to + 動詞』という使い方をするフレーズに対してノルマン人が面倒に感じ、〇〇の部分を省略することを思いつき、すべて『be to + 動詞』に統一してしまったのです。なのでbe to 構文にはgoing, able, supposeなどの意味が混在しているのです。つまり、be to 構文はノルマン人の怠慢の産物だったということです。現代英語では、日常会話で使われることのあまりないこの古い表現を逆手にとって、5つの用法の意味をわざとぼかして混ざり合ったニュアンスの文として使用される傾向があります。ですから、be to 構文は決して、どの用法が適切かを特定するようなものではなく、『ニュアンスで読み取る』のが正解ということになるのです。」

そもそも「いいかげんなもの」に対して、「適切なもの」を選べなどというのは設問としてありえないにもかかわらず、学生の人生を左右するような受験問題の材料にしてしまうことに、日本受験界の闇を感じます。

実は私もこれと同じことを別の文法項目においてずっと感じてきました。

それは、「現在完了の三類型」についての設問です。

I have cooked sushi.

例えば、「この文が完了(結果)なのか、経験なのか、継続なのか答えなさい」という問題がしばしば出題されますが、私は自らが主宰する「文法講座(英文法の虎ノ穴)」の中で、

「このような設問はあまりにばかげている。これらを言い当てるなんてトンデモナイ。答えはその話し手の気持ち(状況)によるとしか言いようがないからです。」

と言い続けてきました。

I have cooked sushi.で言いたいのは、「料理した(完了)ことによって、そこに寿司が存在(現在の状況)している。」ということかもしれないし、「料理した(経験)ことによって、寿司を作ることができる(現在の状況)。」ということかもしれないし、「料理するということが今でも続いている(継続)。」ということかもしれないわけです。

これらは、この一文以外に文脈を説明する文がいくつか存在して、文脈を確定できる状況であるならば、「この文が完了(結果)なのか、経験なのか、継続なのか答えなさい」ということはあり得えますが、この一文だけでそれを問うことは、著者があげた「be to 構文」の設問者と同様に、本質を理解できていないことの証明だと言わざるを得ません。

ということは、出題者自身が、英文法を公式のように丸暗記することを強制された学校教育の犠牲者だともいえるのではないでしょうか。

だからこそ、本書は英語を学ぶ中高生にももちろん読んでいただきたいと思いますが、まずは、英語教育に携わる方にこそ読んでいただきたいと強く思います。

 

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