
なぜthatはthisより発音が難しいのか
2026年4月17日 CATEGORY - 日本人と英語

前回の「子音の分類」の記事同様、今回も英語関連書籍ではない慶應大学の川原教授の「『あ』は「『い』より大きい!?」からテーマをいただいて記事を書きます。
本書の説明の中で、「口の開き」の大小の感覚が、そのままその音の意味としての大小の感覚につながっている可能性があるという点に触れましたが、この時にまた前回同様、私が主宰する「文法講座」の「発音記号」に関する講座に関する講座において私が受講者に対している解説について、その理解を深められる非常に興味深い指摘がありましたので以下にそのことに触れたいと思います。
私が気になっていたのは、文法講座の発音記号のパートにおけるthatの発音【ðæt】とthisの発音【ðɪs】の解説に関してです。
では、その説明に入る前に、その前提となる知識をおさらいしておきます。

それは、この二つの発音は本質的に一緒であり、その本質とは下の画像の口の形(上下の前歯の間に舌を入れる)にして空気を邪魔をしながらも出すことであること、そして【θ】の方はそれを適度な勢いでおこない、【ð】の方はそれをもっと強い力で邪魔をしながらそれでも頑張って空気を出すことであるということです。

私の「文法講座」における発音パートでは、その上で、受講生にthatの発音【ðæt】とthisの発音【ðɪs】の発音練習をしてもらうのですが、どちらが簡単にできると思いますか?
それは圧倒的にthisの発音【ðɪs】の方なのですが、その理由を私は「ðの音は上下の前歯の間に舌を入れて空気をめちゃくちゃ抵抗を高めて『前に出す』音ですが、その後ろに来るア(æ)の音は『後ろに引っ張る』音ですよね、つまりものすごくアクセルをふかしながらブレーキをかけることを同時に行うことになるので難しいのは当たり前なんです。英語圏の人はこの筋トレを小さい時からやっているのでできるのですが、私たち日本人はその筋トレができていない。だから、私も含めて、【ðæt】はあきらめて【zæt】に逃げてしまう人が多いです。でも、文脈上100%理解してもらえるので問題ありません。ちなみに、thisの発音【ðɪs】の方は、い(i)の音も『前に出す』音なので、慣れないðの音だけ意識して発音すればいいだけなのでそこまで難しくはないのです。」
このはあくまでも私の経験的なそして感覚的な解説に過ぎなかったので、学術上正確性に問題がないか心配な部分はありました。
本書には、この部分に関する学術的な解説がありましたので以下該当部分を要約引用します。
「代表的な母音aiueoですが、eとiを『前舌母音』といい、aとuとoを『後舌母音』と言います。つまり、『e』『i』を発音する時には舌が前に出て、『a』『u』『o』を発音する時には舌が後ろに下がるのです。」
私の経験的なそして感覚的な解説は、ここに学術上正確性に問題がなかったことが確認されました(笑)。
今後は、しっかりとこの「前舌母音」と「後舌母音」という用語を用いながら自信をもって説明するようにします。
ここで、少々余談ですが、「『あ』は「『い』より大きい!?」の記事の中で、「aはiよりも大きい」という感覚を私たち人類が共通して持っている理由として、「aを発音する時は顎が大きく開く一方で、iを発音する時は顎が小さくしか開かない」ということから、「口の開き」の大小の感覚が、そのままその音の意味としての大小の感覚につながっている可能性があると書きました。
これについても、上記のeとiが「前舌母音」、aとuとoが「後舌母音」というところから、舌が前に来れば口の中のスペースは狭くなり、舌が後ろに下がれば口の中のスペースは広がるということになり、この関係はaとiだけのものではなく、母音全てにおいてこのことが言えるということになります。
本書では、aiueoの相互関係を「a>o>e>u>i」であるとも示されていました。
今回もまた非常に興味深い知見を得られました。









