日本人と英語

なぜ使役動詞のhaveは受身にならないのか

2021年10月20日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の思考法」からテーマをいただいて書いていますが、第七回目のテーマは「使役動詞の受動態」です。

私は自らが主宰する「全項目を網羅した英文法講座」の「使役動詞」のパートにおいて、「make」「 let」 「have」の三つの使役動詞のうち、唯一「have」だけ受身にはならないという論点において、その理由を「makeとletにおいては主語が主体性を持っており、目的語であるやらされる人には主体性がないのに対して、haveにおいては目的語が率先してやってあげる立場であるため主体性がある以上、受身には意味的になり得ないから」という説明をしています。

しかしながら、この説明はしっかりとした資料に基づいたものではなく、私の体感的な理解を披露していたにすぎませんでした。

今回本書には、「英語の思考法」の「個(独立)」という要素に関連させたこの件についての言及がありましたので以下説明を引用します。

ちなみに、一般的な中学文法では使役動詞を「make」「 let」 「have」に限定されていますが、本書ではそれに「get」というもう一つを加えています。

この「get」についてですが、海外留学などによって生活の中での英語に使ってみますと、結構頻繁に使用される(ただし、補語には原形不定詞ではなくto不定詞を使用する)ことに気が付きますが、それを使役動詞として認識することは少ない思いますので、今回はそれも含めて引用します。

「英語の四つの使役動詞の違いは突き詰めて言うと被使役者、つまり何かをさせられる人の『独立』した意思がどういうものかによる。『個』と『独立』への意識が文法、構文にも反映されているのだ。この四つの使用は被使役者がどれくらい自発的に独立した意思でいるかで以下のように区別される。」

make: 被使役者は使役者(主語)が望むことを「しなくてはならない」と思い行う。つまり、基本的に被使役者は「むりやり」させられるというニュアンスがある。

let: 被使役者は、それをしたいと思うからする。一方で、使役者はそれを妨げることはしない。被使役者のしたいという「独立」した意思が尊重されている表現だ。(ただし、これは被使役者を使役者が「なすがまま」にしておくという意味であって、「なすがまま」にさせられるというニュアンス。)

get: 被使役者は使役者がしてもらいたいと思っていることを自発的にするというニュアンスだ。さらに言えば、その延長で「人に説得したり勧めたりして~するように仕向ける」ことを意味する場合もある。自分が相手にしてほしいことを相手に「自発的に」やってもらう、「イヤかもしれないのに無理やり」ではなく「自分がしたいから」するようにさせる表現だ。

have: 被使役者は、使役者がしてもらいたいと思っていることをするが、被使役者は使役者に対し、「それはしたくない」とは言えないような上下関係の力関係にある。使役者は被使役者をコントロールしようとしているわけではないが、何か目的を達成するための道具・手段として被使役者を見ている。従って、被使役者の「独立」した意思をコントロールしたいわけではない。また、被使役者も「しなくては」と強制されているとは思っていない。その意味で被使役者は自発的に行っている。

まず、本論とは別にになりますが、私が講座でしている「haveにおいては目的語が率先してやってあげる立場であるため」という説明は本書の解説からすると、haveよりもgetに寄った理解ではなかったかと少し反省しました。

とは言え、そのどちらも被使役者が自発的に」行うという意味では完全に一致しています。

その意味でhaveだけではなく、getについても「主体性がある以上、受身には意味的になり得ない」ということになるはずです。