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JOY&FUN(おもしろおかしく)

2020年10月21日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

最近、「日本の労働生産性の低さ」というテーマで様々な本を読んで、このブログでもいくつかの本をご紹介しているのですが、それらの中で共通して紹介されている本がありましたのでご紹介します。

少し古い本ではありますが、堀場製作所の創業者である故堀場雅夫氏の「イヤならやめろ!」です。

この会社の社是は、「JOY&FUN(おもしろおかしく)」で、同社の社内報も同じ「JOY&FUN」という名前で発行されています。

本書は、1994年から社内に向けてこの社是のもととなる著者の経営哲学をこの社内報につづったメッセージを社外にも公開しようとしたものです。

本書には、著者が起業から50年の間に体験した事件、失敗、感激、失意の中から後進に残したいエピソードがまとめられています。

つまり、稀代の大企業家の人生におけるもっともおいしい部分を本人自ら厳選抽出したものを社外の我々の目にも触れさせてくれる貴重なものです。

ただ、そもそもですが、「イヤならやめろ!」というタイトルと「JOY&FUN」という社是は相反するように感じます。

しかし、本書を読むとすぐに、その一見相反するような二つのフレーズが実は切っても切り離せない関係にあることを納得させられます。

といういのも、一つ目の「イヤならやめろ!」のフレーズを逆に「イヤでも頑張れ!」と読み替えてみるとそれがじんわり理解できるようになるからです。

これによって、2015年に90歳で亡くなられた著者は日本を代表する企業家として何十年も日本経済をけん引されてきた方ですが、その考え方は非常に合理的でアメリカ的だと感じました。

そのことが書かれた部分を以下に引用します。

「『おもしろおかしく』を追求するための大前提として『イヤならやめろ』ということを徹底しておかなければなりません。やれるだけやってみてダメだったら諦めることも肝心です。これを痛感したのは私がかつて1960年頃家裁で離婚の調停員をつとめた時のことです。結論から言うと私は最終的にクビになってしまいました。なぜなら、私が担当した組の離婚率があまりに高かったからです。通常の二倍が離婚を選択しました。『それはあかん。そんな相手別れた方がええ』とやっていたからです。よく考えてみてください。相性が悪い二人を無理にヨリを戻させたとしても数年すると必ずと言っていいほどまた来ます。最初に離婚したほうがいいのか、それとも三年四年たってから分かれるのがいいのか。早い方がよりよい未来への再出発への道が大きく開かれているわけです。」

これはまさに、「日本の労働生産性の低さ」がアメリカと日本の労働市場の違いに大いに関係しているという昨今見てきた見解に見事に一致するような気がするのです。

アメリカの企業では簡単に労働者を解雇するのに対して日本の企業はそう簡単に解雇しません。

これをとらえて、アメリカは厳しく、日本はやさしいという見方が実は正しくないのではないか、そしてそれが間接的に「日本の労働生産性の低さ」につながっているのではないかという見方があります。

アメリカにおいて仕事に求められる基準に労働者の能力が達していないと判断された場合、簡単に解雇が言い渡されます。

解雇された労働者にとってはその瞬間はつらいかもしれませんが、その仕事に合わないと判断された時点で新しい可能性を求めて労働市場に自らを向かわせることができます。

一方で、日本の企業ではそれをせずに、ダラダラと仕事に合わない人を雇用し続け、仕事と能力が合致した同期との圧倒的な社内地位の差が出来上がってからその差に耐え切れず自らやめるか、やめられない人はその屈辱に耐えながらも窓際を続けることになります。

どちらが「生産性」の向上に貢献するか、そして労働者本人の人生にとって幸せなのか、著者は1960年代において明確にこのことを認識され、自分のみならず他者へのアドバイスに活用されていたというわけです。

本書を読むことで、「イヤならやめろ!」と「JOY&FUN」は車の両輪であることを私も明確に理解することができました。