アマン伝説
2021年9月12日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
私の友人に本当にうらやましい正真正銘の道楽息子がいます。(笑)
もちろんコロナ前の話ですが、彼は三カ月に一度、「インドにトラを見に行く」とか「ギリシアに神殿を見に行く」などといった「普通ではない旅行」の楽しみを日常に近い頻度でやってのけるのです。
そして、その際の宿泊はほぼ「アマンリゾート」という聞きなれないホテルグループと聞いていて、ずっと興味は持っていたのですが、もちろん行くことはできないし、まとまった情報に触れる機会はありませんでした。
ですが、最近ようやくそのアマンを創設したエイドリアン・ゼッカに関する著作「アマン伝説」を読む機会を得たのでご紹介します。
本書を読んで、アマンというリゾートグループが提供するのは、「そこでしかできない体験」であり、その体験の本質とは、エイドリアン・ゼッカが究極の競争戦略である「競争をしないこと」を実現するために作った仕掛けであるということが分かりました。
以下にその本質が分かる本書内の該当箇所を引用します。
例えば、それは不動産の目利き力から始まります。
「コスト削減を目的に、人が要らないという隔絶したロケーションを選ぶことが前提でありながら、その選定は非常に厳しい。『島に来ると彼はいきなり服を脱いで海に入った。そしてこの島はノーだと言った。』その土地がリゾートにふさわしいかどうかを自分自身の五感で感じ取りそれを瞬時に判断するのは本当だった。彼の行動はビーチに行っても水着にならず、スーツに革靴で分厚い報告書に難しい顔で見入っているようなビジネスマンとは一線を画している。それでいて、自分自身の体をアンテナにして感じ取った情報を分析する、その感覚は冷徹なまでに優秀なビジネスマンなのだ。エイドリアン自身はたぶん服を脱いで海に入っていくことも、頭の中で情報を分析することもそのどちらも自然体なのであり、一連の行動をいつもん面白がって楽しんでやっている。彼は土地選びの天才だと思った。」
また、人材の採用の仕方も次のような具合です。
「アマンが隔絶したロケーションを敢えて選んで開発する背景には、人が要らない土地を安く取得するということもあるが、人件費も安いことだ。しかし、それはただ低賃金ですむという意味ではない。彼は地元の人とコミュニケーションをとるのがうまく、そこの村の人間を青空の下、何百人とあつめて面接をする。そこで一番笑顔がいい人を採用する。そして現地の相場の五倍から十倍の給料を払う。アマンで採用されることが名誉になる仕掛けをするのだ。彼らにしてみれば国家公務員の上級職に受かったようなもので当然にモチベーションが高くなる。」
このような仕掛けによって、「アマンの伝説」をいくつも作ることで、世界中に25万人の「アマンジャンキー」と呼ばれる信奉者を生み出したと言います。
「アマンではそれまでの堅苦しい高級ホテルとは異なる居心地の良さを生み出している。エイドリアン自身のライフスタイルがそうであるように、何に縛られることもなく、何の決まり事もなく、好きな時間に起きて好きなところで好きなことをする。結果、アマンには多くのリピーターが生まれた。そして、いつしか彼らは『アマンジャンキー』と呼ばれるようになった。」
冒頭の友人は間違いなく「アマンジャンキー」の一人だと思いますが、私もそこまででなくとも、いつかは「普通ではない旅行」の「そこでしかできない体験」をしてみたいと思います。