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ゲンロン戦記

2025年6月29日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

何気なく目に入ったかなり前のNewspicksの動画にホリエモンと批評家・哲学者・そして作家の東浩紀氏の対談が結構面白くて、この動画で取り上げられていた東氏の著書「ゲンロン戦記」を読んでみました。

本書は、東氏が2010年に創業した、人文系の書籍の出版のほかイベントスペース事業やアート・カルチャースクール運営事業などを主な事業とする「ゲンロン」という企業における経営の失敗の連続を綴った本です。

著者が自ら本書の前書きに

「人は40歳過ぎても、なおかくも愚かで、間違い続ける。その事実が、もし仮に少なからぬ人に希望を与えるのだとすれば、僕が恥を晒したことにも多少の意味があるだろう。」

と書かれている通り、「えっ、なんで?」と思わず口走ってしまうほどに何度も何度も結構な経営の凡ミスを繰り返しているのを、よくもまあここまで赤裸々にさらしてくれたなと感心してしまうほどに晒してくれています。

私は、本書の意味を、あの他人のことをなかなか褒めることのないホリエモンによってもその批評家・哲学者・作家としての能力をしっかりと評価されているような人間でも、その専門外である「経営」のこととなるとここまでの体たらくになってしまうこともありうることを明らかにしている点にあると理解しました。

そのあたりの生々しい告白を以下にいくつかご紹介します。

「私は30代ですでに大学でも教えたし、テレビにも出たし、小説も書いたし、アニメの原作もやりました。でも根本的に受身でした。どれについても『やったらできそうだな』という感覚でした。大学にも残れそうだし、小説家にもなれそうだ。テレビで有名になったら政治家にだってなれるかもしれない。そんな感覚でいたわけです。でもそれは勘違いです。『やっていけそうだ』と思うことと、現実に実現することは全く違う。やるべきことを発見するというのは、他の選択肢を積極的に切り捨てることでもある。30代の僕はそれが怖くてできなかった。だから『望めばなんにでもなれる自分』を守るため、何もかもできるふりをして選択肢を捨てずにいた。とても幼稚な話です。」

このようなミスは著者に限らず、「その道のプロ」と言われるような人でも結構起こしてしまいます。

例えば、東大で動物学を学び、動物との共生を実践するために北海道と東京に「ムツゴロウ動物王国」を創設したムツゴロウさんこと畑正憲氏は、2006年にその運営が負債総額8億円で破綻し、個人としても3億円の借金を背負うこととなりました(執筆・講演活動などの収入で約8年間かけて借金を完済)。

また、経営ではありませんが、小泉チルドレンとして有名な佐藤ゆかり氏は、外資系投資銀行のエコノミストとして、また大学でも経済学の教鞭を取り、経済産業省、財務省の審議会などで委員として多くの提言も行なうという飛ぶ鳥を落とすような大活躍していた最中の2005年の衆議院議員選挙に当選して政治家となりましたが、その後あまり活躍されたという記憶がない中で、2023年に政界を引退されています。

確かに、著者の「『やっていけそうだ』と思うことと現実に実現することは全く違う」という言葉で、このようなことが起こる理由の説明がつくような気がします。

また、もう一つ印象的だったのが企業が行う「寄付」という行為に対する理解についてです。

「僕は、自らが出版した『思想地図β』について何を思ったのか、売上の1/3を被災地に寄付することを決めてしまいました。それでは全く利益が出ません。結局会社にはお金が残らず、経営危機を招きます。寄付は尊い行為です。しかし、寄付のために会社を潰しては本末転倒です。当時の僕には震災や原発事故に何かアクションを起こさなければいけないという強い焦りがあったんだと思います。」

企業と社会貢献の関係を真剣に考えると、その解は決して「寄付」ではなく、どこまで行ってもその企業の「営業」による社会に対する価値の提供であるべきだというのがよく分かる事例だったと思います。

そんな、当たり前だけれど大切なことを著者は自らの恥を赤裸々に晒しながらも教えてくれました。

 

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