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ジブンの世界はジンブンでできている

2026年5月1日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

最近とても懇意にさせていただいているキムタツ先生が灘校時代の教え子が立ち上げたばかりの出版社であるジブン×ジンブン社から新しい本「子どもの英語嫌いをなくしたい」を出されたというお話を聞き、早速アマゾンで購入予約をしたにもかかわらず、ナフサショック張りの需給バランスのゆがみ(それほど売れてる!)から全然届かないので、このジブン・ジンブン社が最初に出版された「ジブンの世界はジンブンでできている」という本を購入し、読んでみることにしました。

その教え子というのが原田央(はらだ・あきら)さんという方で、灘校から理科一類に入学後、工学部社会基盤学科に進学、大学院も工学系研究科社会基盤学専攻という「ジンブン(人文)」とは程遠いバックグラウンドを持ちながらも、この出版業界冬の時代に自ら出版社を立ち上げられたという本当にユニークすぎる若者です。

しかも、ただでさえ本が売れないと言われるこの時代に、自分たちが読みたい本、必要だと思う本という観点から「人文書」という地味な分野を中心に扱っているというからさらに驚きです。

それ程に「自分・ジブン」×「人文・ジンブン」に拘り抜いている彼が最初に出された本書の目的を一言でいうと「人文学に携わっている人の考えに触れることで人生を豊かにすること」だそうです。

もう少し言えば、本書からの気づきによって私たちの身の回りのいろいろなモノをジブンゴトとして捉えること(ジブンとジンブンとの往復作業)によってまずは自分の「世界」を変えていくことができるようにすることだとも。

そのために、実際に「人文学:歴史学や哲学、文学や言語学などに代表される、他人の営みに関する学問分野の総称」に取り組まれてきた、もしくは取り組み始めた研究者である東京大学の教授 梶谷真司氏と同大学駒場博物館の学芸員の折茂克哉氏、そして同大学大学院博士課程の岡田進之介氏の三名が、自らの「自分ごと」がどのように生まれて、どうして「人文学」にたどり着き、そこでの活動で自分の「世界」を変えていくことを実感されているのかを、鼎談を通して明らかにしてくれています。

以下に本書の魅力が伝わるように私が印象的だと思った箇所をいくつか要約引用したいと思います。

◆梶谷真司氏

「私は哲学とは難解で、『分かる』なんて簡単にはとても言えないものだと思っていました。でも、ヘルマン・シュミッツというドイツの哲学者の本に出合って哲学は『分かっていいんだ』と初めて気づいたんです。この『分かる』と言いう体験をしてからは、自分が分かったことしか書いていないという自信が持てるようになりました。私は論文を書いたらまずは妻に必ず読んでもらうようにします。最初の読者である彼女が『分からない』と言った箇所はすべて治す。最低限の知的関心さえあれば、専門知識がなくても分かるように、これまでの本屋論文を書いてきた自負があります。」

この言葉を聞いて、私たちの身の回りのいろいろなモノをジブンゴトとして捉えること(ジブンとジンブンとの往復作業)によってまずは自分の「世界」を変え、それを世の中に分かりやすく伝えていくことで「世界全体」をも変えていくことができる人文学の力を少しだけ理解できたような気がしました。

◆折茂克哉氏

「人生において自分が好きな分野は変わっていくので、その時その時でゼロベースで学ぶ姿勢を大切にしなければならない。とはいえそれでもやはりそこにはある種のスキルが必要になる。例えば、分野ごとの詳しい知識はなくても、分野ごとに抑えておくべき肝があることを知っていれば、そこを抑えに行こうと思えますよね。また、その分野の研究者が必ず読むべき重要な文献があるだろうし、研究史もあるでしょう。その分野でよく使われる研究手法もあるはず。そういうことを自分の研究を通じて『メタ知識』として持てればいいのです。」

つまり、自分の「世界」を変え、それを世の中に分かりやすく伝えていくことで「世界全体」をも変えていくためには、「研究」の手法が不可欠だということです。ちなみに、このことについては偶然ですが、以前に書いた「専門性の身につけ方」の記事でも触れました。

◆岡田進之介氏

「フィクションでは人間の動物としての側面をうまく使って、他人の感情をコントロールしている。ではそれをノンフィクション、ひいては現実でやっていいのだろうか?アメリカの大統領選の演説会で、トランプが銃撃されたとき、すごくかっこいい報道写真が出回りましたよね。私は『これはやばいな、完全にプロパガンダだ』と思いました。あの写真から、トランプに英雄性を付与してはいけないと思います。でもやはり、人間は感情に基づいた判断から逃れるのは難しいので、落としどころを見つけられるのか、というのが今後の課題になる気がします。」

岡田氏の「人間は感情に基づいた判断から逃れるのは難しいので、落としどころを見つけられるのか」という視点こそが、まさに「私たちの身の回りのいろいろなモノをジブンゴトとして捉えることによってまずは自分の世界を変えていく」という「人文(ジンブン)」の本質を射抜いた言葉だなと感じました。

この鼎談によって、私も「人文(ジンブン)」の魅力をしっかりと理解できたことで、ジブン×ジンブン社の原田氏がなぜこの出版不況の時代に自ら出版社を立ち上げられたのか、その理由が分かったような気がします。

STEAM教育全盛で肩身の狭い思いをしている「人文(ジンブン)」教育の本質的な魅力と必要性を再確認させていただきました。

 

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