スマホ脳
2021年4月7日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
かなり前になりますが、「スティーブジョブズはわが子をアナログで育てた」という記事を書いて、スティーブジョブズをはじめとする米国のハイテク企業の創業者の多くが、自らの子供たちの教育から、自分たちの企業の製品・サービスをある年代までは遠ざけているという事実をご紹介しました。
今回は、その問題を深堀りするべく、デジタルデバイスが人間の脳に与える影響についての最新の研究を基に書かれた世界的ベストセラーである「スマホ脳」という本を読みましたのでご紹介します。
まずは、人間の脳が現代社会に適応できずに問題を引き起こしている理由を本書から大まかに引用します。
「人間の脳が今のような形に進化するには人間が今のような現代的な生活を手にした期間と比べて比べ物にならないくらい長い時間がかかっている。その基本は、生き残るために危険を回避するというアルゴリズムだ。そのため、脳は、強いストレスや心配事があると『闘争か逃走』を選び、どちらにしても筋肉に大量の血液を流す指令を出す。逆にそれ以外のことは一切考えられなくなるようにプログラムされている。ただし、現代人はライオンに出会うというような激しいストレスを感じることがなくなり、その代わり、仕事の締切や高額なローン、そしてSNS上の『いいね』の数の少なさなど小さなストレスを長時間継続して感じることが多くなっている。しかし、先述したようにその仕組みは命にかかわるような大きなストレスを『時々』受けることに対応するためのものなので、常に小さなストレスをずっと受け続けることによって、『即座に解決すべき問題以外は全て後回しにする』という選択肢しかなくなり、深い思考に基づく対応への余裕がなくなる。」
現代人が、即座に解決すべき問題以外は全て「後回し」にしていただけであって、その小さなストレスは「蓄積」はしているということは見過ごせません。
その小さなストレスの「蓄積」はある限度を超えると、本来時々起こるはずの大きなストレスに対するのと同じような反応をしてしまうことになります。
このような見方をすれば、現代人がちょっとしたことに「すぐにキレる」という現象は、「闘争」を選択した結果であり、「引きこもる」のは「逃走」を選択した結果だと受け取ることができます。
次に、ここ10年で一般化してきたデジタルデバイスが特に人間の脳に与える影響について本書から大まかに引用します。
「人間は長い進化の歴史の中で、周囲の環境を理解することで生き延びる可能性を高めてきた。そのため常に新しい情報を探そうとする本能を身に着けた。この本能は何に集中すべきかを選択させるドーパミンという脳内物質が支えている。しかし、たまに恐ろしいライオンや食べるための獲物の情報が現れるかつての世界と比べ、スマホの『通知』は一日に何十、何百回に上り、その度に脳はドーパミンを出すため、『見たい』という欲求が生じてしまう。実は、SNSの開発者たちはこの脳の本能を熟知しており、この脳の報酬システムのメカニズムをダイレクトにハッキングして意図的に私たちを『スマホ依存症』しているのだ。」
これも上記の「ストレス」と同様、「快楽」の「蓄積」効果のようにとらえられます。
飲酒や薬物と比べて一回の影響は大きくなくとも、一日に何十、何百回も繰り返されるわけですからこの「スマホ依存症」の深刻さは大変なものです。
このダイレクトハッキングによって、SNSの開発者たちは「広告」という名のもとに私たちの圧倒的な「時間」と「注意」を「お金」に変えていることになります。
それは、このことを熟知しているデジタル側の人間が、自らの子供たちをデジタルデバイスから遠ざけようとするのは当然だと思います。