セブン買収成否の本当の意味
2024年9月18日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先月、まさか!と思われるような経済ニュースが飛び込んできたのは皆さんの記憶にも新しいと思います。
それは、あの「セブンイレブン」を運営するセブン&アイ・ホールディングスに対して「サークルK」ブランドなどのコンビニエンスストアを経営するカナダの大手「アリマンタシオン・クシュタール」が5兆5000億円もの巨額買収を提案したというものです。
日本における最優良企業の代表格と思われていた同社に対する「買収」の提案ということで多くの日本人が驚いたこの件に関して、クーリエ・ジャポンが、
「セブン買収は株主資本主義を日本が受け入れるかどうかのテストだ」
という非常に興味深いタイトルの記事を載せていましたので以下に引用の上、ご紹介します。
「今回のアリマンタシオン・クシュタールによるセブン&アイ・ホールディングスの買収案件は、日本がこれまでに経験したことのない、変革的で最も重要な企業の合併買収案件だと、多くの銀行家、投資家、弁護士、政府関係者が話している。クシュタールは過去20年にわたり、日本の小売企業の買収を目指し、断念し続けてきた。その理由はさまざまで、日本企業による買収に対する本能的な抵抗感、新株を発行する『ポイズンピル』などの買収防衛策の実行しやすさ、株主利益の最優先を求めるガバナンスの不在などが挙げられる。しかし、2つの異なるアクティビストファンドが、企業利益を向上させるための経営合理化を、セブン&アイに促してきたことで、同社の対応がやや軟化した。この買収は、2023年に経済産業省が策定した『企業買収における行動指針』に規定されるものでもある。同ガイドラインは日本企業に対し、善意の買収アプローチを無視せず、検討することをほぼ義務付けている。しかし、それでも日本政府が外国企業によるセブン&アイの所有を容認するかはわからない。コンビニは、日本の得意技の結晶である。新鮮な弁当、手頃な価格のワイン、ジェラート、シャツ、葬式用の道具、化粧品、恐竜の組み立てキット、コンサートチケットなど、幅広い商品が売られている。顧客はそこで税金を払い、銀行も利用できる。コンビニは人々の生活になくてはならない存在になろうと努力し、その座を勝ち取ったのだ。それを可能にしているのは、効率的な流通ロジスティクスである。『外国人が日本企業を買収できるようにすべきだと思います。でも、この特殊な会社を外国人が経営できるとは思えません。』おやつを買う客はそう言う。しかし、国内での優位性と経営ノウハウは、株主還元には結びついていない。これは他の多くの日本企業と同様だが、同社の株を長年保有している投資家は、セブン&アイは日本の最高の面と最低の面を象徴していると述べる。中核事業であるコンビニ事業の陰には、スーパーマーケット、レストラン、その他無関係な事業がある。その収益レベルはそれぞれ異なり、(本来であれば)とっくに事業売却すべきものが含まれたままだ。また、クシュタールの申し出が公表されてからの急騰を考慮しても、同社の株価はここ5年ほど、日経平均株価の動きを下回っている。『コンビニの父』と言われた鈴木敏文氏をファンドの力によって退任させてトップに付いた井坂玄CEOの就任以来、同社は250億ドル(約3兆5000億円)を買収に費やしたものの、時価総額は円ベースでは変わらず、ドルベースではマイナスだった。実に同期間の株主総利回りはマイナス1%。一方、クシュタールは、同期間に120億ドル(約1兆7000億円)の資本を投入し、株主総利回りは191%。この差(比率で言ったら約200倍!)こそが、カナダ企業による今回の買収の機会を招いたのだ。この買収は、日本が株主資本主義を本当に受け入れる意志があるかどうかの『リトマス試験紙』になると多くの人が評している。今回のクシュタールの入札が否決されれば、他企業にとって重要な前例になる。もしセブン&アイが拒否するのであれば、株主は何が提示されたのかを知らされなくてはならない。この展開を見て、日本中の経営者が自分たちも近いうちに同じような立場に立たされるのではないかという懸念を強めているようだ。」
ということは、これまで日本人は欧米が作り上げた「株式会社制度」を受け入れながらも、日本の株式会社は、ずっとその制度の上で世界的に「特殊な日本人」によって経営される「特殊な会社」であるべきという信念を持ち続けてきたということになりそうです。
しかし、今回は国(経済産業省)も投資家も、そしてその投資家によって選任された経営者も、「特殊な会社」から脱皮するべきだという同じ方向を見ようとはしているという意味で、上記の「信念」に抗おうとする姿勢が見えはじめているといった状況でしょうか。
としたら、この「株主資本主義を日本が受け入れるかどうかのテスト」の合格第一号にセブン&アイがなるのかならないのかの最後の決め手を握っているのは、頭では「外国人が日本企業を買収できるようにすべき」と分かっていながらも、まだ「でも、この特殊な会社を外国人が経営できるとは思えない」という信念を心のどこかに持ってしまいがちな私たち日本国民の一人一人なのかもしれないと思えてきました。