トランプ勝利は想定外ではなかった
2024年11月10日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前々回、前回とトランプ氏大統領選挙勝利確定とワシントンDCの連邦議会選挙の投票権問題というアメリカの政治に関するテーマを取り上げましたが、引き続き今回もこのテーマで書きたいと思います。
今回のアメリカ大統領選挙においては、事前予想では結果判明は投票日数日後まで時間を要する見込みと言われており、実際の開票直後でのトランプ圧勝の判明は「想定外」と言われていました。
しかし、11月9日になって、いわゆる激戦州と言われる7州の全てにおいてトランプ勝利が確定したというニュースが届き、もはやこれを「想定外」として片付けるべきではないという議論が出てきているようです。
こちらについては日経新聞の「トランプ氏復活当選の意味」をご参照ください。
日本でも、選挙直前までどちらが勝ってもおかしくない大接戦が予想されていただけでなく、テレビのコメンテーターなどが、選挙前にもかかわらずトランプ候補に対するあからさまな嫌悪感を表明するなど、「アメリカの良識が勝利するならば、それはハリス勝利であるべき」といったバイアスのかかった論調が多くありました。
正直言って、個人的には私自身もそのように考えていた一人でもありました。
ところが、実際には日本のメディアでもその「良識」に疑問を呈する論調の記事が2024年1月の時点で存在していたことを今になって確認しました。その記事とは、President Onlineの「なぜアメリカ人はトランプ返り咲きを期待するのか」です。
以下に、印象的な部分を引用してみます。
「米西部コロラド州の最高裁判所は2023年12月19日、トランプ氏が2021年1月の連邦議会襲撃に加わったと認定し、大統領選の出馬資格がないと判断した。トランプ氏本人は反乱への加担を否定しているが、世論調査大手のユーガブがこの判決の直後に実施した調査では、回答者の合計54%がこの判決を支持すると答えた。つまり、多くの米国民が、『トランプはひどい大統領であった』『不適格だ』と考えていることを示唆する結果である。」
ところが一方で、経済の視点で見るとこのようになります。
「ポイントは、選択肢はバイデンかトランプだけだということである。トランプ、バイデンのことがキライであっても、国民生活の苦境を改善するうえでどちらがマシかを考え、それを基準に投票しなければならない。この点において、狂乱物価を効果的に制御できなかったと多くの有権者に見られている現職大統領のバイデン氏は圧倒的に不利だ。逆に、トランプ氏は『バイデンのインフレはひどすぎる。こんなことならトランプの方がマシ』と見てもらえるわけだ。」
私達日本人は、昨今の超円安とアメリカ(に限らず日本以外のほとんどの先進国)でのインフレが掛け合わされ、救いようのない「貧乏感」を実感させられています。
特に、インバウンドで日本を訪れたアメリカ人が、「カリフォルニアでは最低賃金が時給3000円」とか「ニューヨークではラーメン1杯が3000円なのに、東京では700円で食べられる」などと言っているのを見るとものすごく羨ましい感情に支配されることになります。
そしてそれが、日本が30年ほとんど経済成長をしなかったのに対して、アメリカは順調に経済成長し続けた結果だという説明をされれば、私達日本人はどう反省したらいいかもわからずにただただ暗澹たる気持ちになるだけです。
しかし、落ち着いて考えてみると日本に来て「最高!」と言っているアメリカ人は、決してアメリカ人全体を代表しているわけではないということに気づきます。
実際にこの記事では次のような言及がなされています。
「事実、消費者が購入する各種のモノやサービスの小売価格の変動を調査・算出した米国の消費者物価指数(CPI)は、2015年12月から2023年12月までの間に累計で25%以上も上昇しており、その急上昇分のほぼすべてがバイデン政権下で起こっている。この急激なインフレに賃金の上昇率が追い付けず、多くの米国人の実質賃金は目減りをしてしまった。そのため、消費を切り詰め、2つ以上の仕事を掛け持ちして何とか糊口をしのいでいる人が多い。にもかかわらず、バイデン政権は『失業率を歴史的な水準に低下させ、半導体・電気自動車・バッテリー・クリーンエネルギーなどの産業を振興し、2023年7~9月期の国内総生産(GDP)を前期比の年率換算で4.9%も上げるなど、着実な成果を上げた』として、バイデン大統領の経済政策である『バイデノミクス』を誇っている。これでは、国民の間に意識の差が生まれるのは当然だ。多くの米国人にとり、GDPがどれだけ伸びても暮らし向きは全然楽にならず、逆に収入の目減りが続いている。」
つまり、バイデン・ハリスの民主党政権は、少数派のインテリ高所得層に照準を合わせた経済政策でアメリカ全体の富を最大化させたことを「成果」として誇っているだけで、額に汗して生活費を稼ぐアメリカ国民の多数派にはその成果を十分に分配してきているとは言えないということです。
いくら「新産業創出」だとか「クリーンエネルギー」だと誇ってみたところで、選挙では1票は1票ですので、多数派を無視して勝てるものではありません。
このあまりに単純なことに、私達外野はもちろんのこと、当事者である米国民主党の面々も気づくことができなかったということでしょうか。
日本もアメリカも、全体としての経済成長の状況は正反対ながらも、現政権が多数派に目を向けなかったことによって似たような選挙結果となったことは非常に興味深いことだと思います。