
万博のレガシーとは
2025年6月25日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先週末、「英文法の虎ノ穴」の大阪会場での講義の終了後、2025大阪万博へ行ってきました。
私は、オリンピックにしても万博にしても、インフラがすでに整った先進国が開催国として手を挙げるべきではないという考えをもってきました。
それは、かつての1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博において、日本は自国経済発展の起爆剤としての恩恵を十分に享受してきたのに、いまだインフラ整備が整っていない中でも著しい発展の真っただ中にいる途上国を押しのけてまで、成熟しきった日本で行うことの意味が分からなかったからです。
そして、当初から下馬評でも「いまさら日本で万博をやっても誰が行くんだ?」という声が結構あったことも事実でした。
しかし、実際に行ってみると(土日の講義の終了後、平日の月曜日でしかも雨天だったのに)あまりの人の多さ、しかもインバウンドの外国人ばかりというわけでもなく、純粋に日本人の来場者の数がものすごかったことに驚きました。
昨今の日本では、内向き志向が取りざたされ「留学に行く人が少ない」と言われていますが、自らが外に出なくとも世界が向こうからやってきてくれるのであれば、日本人は「世界を見たい」のだと、新しい発見をした気がしました。
事前のパビリオンの予約をしないで行った私は、人気の場所にはほとんど入ることができませんで、11:00~15:00くらいの間ほとんど、会場全体を見て回ったり、人間観察をしたりで終わってしまいました。(結局入館できたのはマレーシア、シンガポール、トルコ、オーストラリアくらいでした)
ですから、大方の予想に反してこの万博は経済的には成功だったと言っていいのかもしれません。
しかしです。
パビリオンにほとんど入れず、しかたがなく会場全体を見て回っていた私は、どうしようもない失望感と怒りの感情をこの万博から受け取らざるを得ませんでした。
私としては誰かが努力して行っていることに対して批判的なことを書くのはビジネスマンとしてやるべきではないことだと思ってはいるのですが、これだけは言っておかなければという気持ちになってしまいましたのでどうかご容赦ください。
それは、世界最大の木造建築物としてギネスブックにも認定された「大屋根リンク」についてです。
建築面積: | 61,035.55 m² |
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内径: | 約615m |
外径: | 約675m |
幅: | 約30m |
高さ: | 約12m(外側約20m) ※来場者が歩くことができるスカイウォークの高さ |
使用木材: | (国産)スギ、ヒノキ (外国産)オウシュウアカマツ ※国産が約7割、外国産が約3割 |
午前中からずっと落雷の恐れがあるということで大屋根リングの上に上ることが禁止されていたのですが、14:00頃になってようやく上ることができ、このあまりにも大きな木造構造物に度肝を抜かれたのでした。
内径と外形の平均で計算しても円周は2025.3mですので、2km以上にわたってこのような木組みの構造体が、続いているのです(ただし、それぞれの木材は無垢材ではなく板材を接着剤で接合して作られた集成材でした)。
いずれにしても圧倒的ダントツのギネス記録であるはずです。
このような圧倒的な木材の使用量とこの人手不足の中で膨大な労働量を費やして作ったこの大屋根リングを、たった6カ月しか開催しない万博のためだけに建設し、終了したら解体撤去ということが計画されているという事実に、元々「もったいない」という気持ちを持ってはいましたが、実際にこの目で見て登ってみたことで、どうしようもない失望感と怒りの感情が一気に湧き上がってきたのです。
一部は「万博レガシー」として「残す」などといった話も出ているようですが、そもそもこれだけの木材をこの短期間のイベントのためだけに使用しようとするその意思決定の(あえて言わせてください)下品さにあきれ果ててしまいました。
片や、数日前の読売新聞で「老朽化ビルの再資源化」という新しい流れを「プラス」でありつつも「ようやくか」といった気持で目にしていたこともあって、この「万博大屋根リンク」の当初からの計画に対しては、何が「持続可能な社会」か、何が「SDGs」かと、私の呆れ具合に拍車がかかってしまったのです。
私には、この「万博レガシー」とは「負の遺産」としか思えないですし、ギネスブックへの登録も「皮肉」としてとらえられているとしか思えなくなってしまいました。