人生で起こること すべて良きこと
2024年5月5日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
田坂広志氏の「ゼロポイントフィールド」シリーズを三回にわたってご紹介してきましたが、今回の第四弾「こころの技法」にて最終回といたします。
前々回においては表面意識と無意識の世界にあるネガティブ想念を「消す」ための「絶対肯定の想念を持つ」という技法の具体例として、「瞑想」を、そして前回においては「多重人格」を必要に応じてマネージすることによって「ポジティブ想念を強く抱く人格」を大人としての「冷静で戦略的な人格」と両立させるという方法を紹介しました。
ただ、それらは実際に実行するとなるとかなり「難しい」というのが正直な感想でした。
そこで、もう少し具体的に解説しているものはないかと著者の過去の著作を探していたところ、見つけたのが先の三冊よりも5~6年前に出版された本書でした。
その副タイトルが「人生で起こること すべて良きこと」となっており、「逆境」を乗り越えるための様々な「技法」を分かりやすく対話形式にてまとめているとのことでしたので手に取ってみた次第です。
実際に読んでみての印象としては、先の三冊の内容が非常に深いものでありながらも「難しい」というものであったのに対し、圧倒的に「具体的」であり分かりやすいというものでした。
本書で言っている「『人生で起こること すべて良きこと』と思い定めることで道は拓ける」というのはまさに先の三冊が唱える「絶対肯定の想念を持つ」という姿勢の重要性そのものなのですが、そのことが重要である理由が次のように非常に端的かつ論理的に説明されています。
逆境に直面したとき、「人生で起こることすべて良きこと」と思い定めると、目の前の逆境に「正対」する力を確保することができるからというのがその理由です。
人は逆境に直面したとき、「なぜこんなことになったのか」という過去への後悔や、「これからどうなってしまうのか」という未来への不安に心のエネルギーの大半を使ってしまいます。
そうすると、本来やらなければならにその逆境への対処に正対する力はおのずと不足し、さらにその状況は悪化するという負のスパイラルに陥ります。
しかし、常に「人生で起こることすべて良きこと」と思い定めていれば、逆境に適切に対処する力を無用に浪費せずに正対することができ、それを乗り越える可能性が格段に上がります。
ただ、人生にはそんなことを不可能にしてしまうくらいの圧倒的な逆境、例えば身近な人の死や自らの大病などが襲ってくることがあり、そんなときにはとても「人生で起こることすべて良きこと」など思うことができないこともあります。
その場合には、一旦「人生で起こることすべてに深い意味がある」と思い定めるべきだと著者は言います。
身近な人の死や自らの大病などは時間が経つことでだんだんと整理することができるようになるものであり、その瞬間はとても「良きこと」とは思えようもないはずで、時間稼ぎの意味があると私は捉えました。
しかし、ここで著者は意外にも次のような冷徹な現実を私たちに突きつけます。
「人生において成功は約束されていない」
そして、それでも成功に向かって最大限の努力をすべきで、その結果失敗したときに自分を支えるものを持つべきだと言います。
それが「しかし、人生において成長は約束されている」という信念です。
成功だけを目指す限り、人生におけるすべての出来事は、成功という「良いこと」と失敗という「悪いこと」の二つに分かれてしまいます。しかし、失敗(逆境)に正対し、それを自分の成長に結び付けることができれば、それは必ず「良きこと」に転じることができるという訳です。
どうでしょう。
言っていることは、先の三冊同様、「絶対肯定の想念を持つ」ことのススメであることに変わりはないのですが、その腹落ち感において本書の説明は圧倒的だったというのが率直な感想です。