人生100年時代は来ない?
2024年10月8日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
つい最近まで当然来るはずのものと思われてきた「人生100年時代」という近未来が、実は幻だったのかもしれないというニュースが、本日(2024年10月8日)の共同通信のウェブ記事にありました。
以下引用します。
「日本を含む長寿の国でこの30年、平均寿命の延びは鈍化しており、今世紀中に100歳まで生きる人の割合が女性で15%、男性で5%を超えることはないとの予測を、米イリノイ大などのチームが7日、米科学誌ネイチャーエイジングに発表した。今後は老化を遅らせる画期的な技術が登場しない限り、急速な寿命延長は望めないとしている。日本や韓国、スイスなど長寿の9カ国・地域の人口データを解析すると、1990年~2019年の約30年で寿命が平均6.5歳延びたことが分かった。20世紀には衛生状態の改善や医療の進歩で幼児の死亡率が低下、続いて中高年の健康も向上し、10年につき3歳のペースで寿命が延びたが、最近30年はこの水準を下回っている。世界各国の年齢別・男女別死亡率から最も低い値をかき集めた「理想的な長寿国家」の寿命を算出すると、19年生まれの女性で88.68歳、男性が83.17歳。100歳まで生きる確率は女性が13.9%、男性は4.5%となった。」
記事中の、平均寿命の延びのペースの部分が少し分かりにくいように感じたので、自分なりに整理してみます。
まず、直近30年間の平均寿命の延びが6.5歳ペースということは明確に分かります。
そして、20世紀をとおして、30年間での平均寿命の平均の延びは、10年間で3歳ということなので、対比可能な30年間での平均寿命の平均の延びとしては、3×3=9歳ということになるでしょう。
ですから、この20世紀における30年間での延びが9歳であったことに対して、直近の30年間での延びが6.5歳だから、「人生100年時代は幻になりそうだ」ということなのだと思います。
しかし、20世紀というのは、初頭はまだまだ世界的にも衛生環境が劣悪な状況からスタートしているはずなので、その100年における勢いと、すでに衛生環境が改善された後の勢いには当然にして差が出てしかるべきでしょう。
それは、「集積回路上のトランジスタの数が18カ月ごとに2倍になる」というムーアの法則が最近になって「18か月が24か月」になってきているという議論と同様のことと思います。
たとえ勢いに陰りが見えたとしても、改善は引き続き起こるわけで、それは「人生100年が来なくなる」ということとは違うように思います。
いや、と言いますか「来る来ない」の議論の前に、そもそも論として考えなければならないことがこの「長寿」の問題にはあると思います。
それは、「人生100年時代はすぐそこ」という当然のことのように言われてきた近未来は、そもそもポジティブな未来として我々が捉えてきたのだろうかという議論です。
「定年してから40年近くどう生きるのか?」
「年金以外に2000万円必要な老後をどう生きるのか?」
「年金・医療制度は持続可能なのか?」
など、ネガティブで危機感を煽るようなフレーズとともに語られることが多かったはずです。
しかも記事では、「日本や韓国、スイスなどの長寿国」などと持ち上げられていますが、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されない期間)は、以下のようになっています。
つまり、これらの国では、老後の財政的な不安材料のみならず、平均寿命と健康寿命の差(健康でなくなった状態で生きる期間)が軒並み、10年間を超えていることになり、それはとても胸を張れるようなことであるとは到底思えないのです。
あくまでも「長寿」の議論は、「健康でなくなってからの寿命」を伸ばすことにどれほどの意味があるのかということの議論とセットで行われるべきことのような気がします。