休養学
2024年12月22日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
健康維持には「運動」「栄養」「休養」の三つが大切であるということは誰もが知っている基本中の基本知識でしょう。
しかし、運動には「スポーツ科学」、栄養には「栄養学」というれっきとした学問体系が存在しているのに、「休養」にはそれを専門とする学問が存在していません。
このことに疑問を感じ、「休養学」という学問を20年前に提唱し始めた方が一般社団法人日本リカバリー協会の代表理事にして医学博士の片野秀樹氏です。
彼の20年にわたる研究の成果をまとめた「あなたを疲れから救う休養学」という著書を読みましたのでご紹介します。
まずは「疲労」とは何かということからですが、「痛み」「発熱」を合わせて全部で三つある体が発する警告(アラート)の一つであり、私たちの本来の体力(パフォーマンス)を下げてしまうものです。
そして、このアラートの目的は、「活動」によって下がってしまった自分自身の体力(パフォーマンス)をもとのレベルに戻すために「休養」を取ることを促すことです。
ただし、人間の持つ三つのアラートのうち、「痛み」「発熱」の二つは自分自身で無視することができないのですが、「疲労」だけは無視(マスキング)することができてしまうのです。
この無視(マスキング)する「能力」は他の動物にはないもので、脳が圧倒的に大きく進化した人間だけが持ち、これによって「責任」を全うし社会を発展させる原動力となったと考えられるある意味素晴らしいものなのですが、この「能力」を発揮した後の回復にものすごく長い時間がかかってしまうという副作用があります。
しかも、無視(マスキング)をし続けていくと、結果として回復困難な「病気」を引き起こしてしまうもので、現代人にとって大きな問題となっています。
ちなみに、徹夜明けにコーヒーやエナジードリンクを飲むと疲れがとれると思われていますが、実はこれはそれらに含まれるカフェインによってこの「疲労」を無視(マスキング)することで単に感じさせずに、疲労を先送りすることで大きな負債を負っている状態にすぎないというのです。
その先にあるのは、うつ病などの心の病や心筋梗塞などの身体的病などです。
そこで必要なのは、「疲れたら休む」という本当に当たり前のことだというのですが、現代社会、特に日本社会においてそれが許されないことが大きな問題となっています。
実際に、「今日は熱があるので休みます。」と会社に言うことはできても、「今日は疲れているので休みます。」とは口が裂けても言えないという常識があります。
しかしながら、実際にはこの「疲労」によって最終的に病気になったり、病気までは至らなくても本来のパフォーマンスを発揮できなかったことによって、年間1.2兆円(もちろん医療費を除いた純粋なパフォーマンス低下による)の経済損失が生じているとの試算が紹介されているのです。
そのため、著者は「休養学」という学問を確立して、「今日は疲れているので休みます。」ということが「今日は熱があるので休みます。」と同じくらいに必要であることを日本社会が体系的に理解できるようにして、精神的にも身体的にも、そして経済的にも健康な社会に貢献されたいと考えているというわけです。
(もちろんそれは、そのような発言を生産性の維持や向上を目的として発し、結果として持続的にそれを実現することが労働者として当然のこととする考え方とセットでなければならないのは言うまでもありませんが)
当たり前だけれども、多くの人が無視(マスキング)をし続けている非常に重要な視点に気づかせていただいたと思っています。