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医療40兆円の無駄

2021年1月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

私は、以前このブログにて「医療崩壊の謎」と言いう記事を書き、この「謎」があまりにも単純で情けない理由であったことにあきれ果て、日本の医療にはこれに限らずもっと大きな問題を抱えているのではないかという疑問を呈していました。

この疑問に答えてくれるであろう一冊の本を読みましたのでご紹介します。

それは「医療40兆円の無駄」という現役の医師による医療経済に関する本です。

冒頭から以下のような、現場を知っている著者だからこそできる非常に根源的で厳しい指摘をされています。

「人工透析という腎不全の患者30万人が利用する治療法がある。これは、血液中の老廃物をろ過し排出する機能を担う腎臓の代わりに、一旦血液を体外に出し、機械でろ過して体内に戻すというものだ。これには1回あたり3~4時間かかり一週間に三回行う必要がある。この治療には毎年1兆5千億円の公的資金が使われている。しかもこの治療は対症療法にすぎず、その患者が生きている間はずっと続けなければならないものである。日本の高齢化を考えると、今後これを続けていくことは財政的にほぼ不可能である。しかし、この議論をしようとすると必ず『命とお金と一体どっちが大切なのか』という意見が出てくる。しかし、根治させることのできない治療でここまでコストがかかる病気はこれ以外にはほとんどない。しかも、ずっとコストの低い根治治療も存在している。それが『腎臓移植』だ。しかし、これにはドナーが必要だが、日本ではそのドナーが圧倒的に不足している。日本では年間に120万人以上が亡くなり、そのうち他の臓器への影響の少ない脳卒中で亡くなる方の割合も多いのにも関わらず、ドナー登録数が少ないからだ。これはこの問題への認識不足と責任感の欠如が原因である。」

当事者意識をもって解決方法を見出せば、現在のその場しのぎの対症療法よりもずっと適切で効果的な方法があるのに、社会としてそれを選択しないのは「この問題への認識不足と責任感の欠如」であるという著者の指摘は圧倒的に私の心に響きました。

そこですかさず、自分の免許書の裏を確認して何の意思表示もしていなかった自分自身を恥じ、その場で「1.私は、脳死後及び心臓が停止した死後のいずれでも、移植のために臓器を提供します。」に〇をつけ、自筆署名しました。

しかし、日本社会全体で考えたら、「この問題への認識不足と責任感の欠如」の解消を制度的に担保しなければなりません。

そこで著者が本書の中で示されていた具体案を以下に紹介します。

「人工透析治療の公費負担は治療開始後2年間までに制限する。2年間を超える場合は自己負担とする。慢性腎不全の治療法の第一選択を腎臓移植とする。全国民に腎臓移植のドナー登録を義務付ける。拒否権も認めるが、その場合、その者は公的医療による人工透析治療、腎臓移植を受ける権利を失う。」

まさに「この問題への認識不足と責任感の欠如」の両方の解消をあっという間に実現させる力を持つ素晴らしい具体案だと思いました。

しかも、「平等感」がすごい。これは著者の「当事者意識」を多分に持つ現役の医者としての立場だからこそできる具体案だからだと思います。

これ以外にも、日本の医療の問題点を具体的な数字や状況を織り交ぜつつ、非常に分かりやすく解説してくれています。

本書での著者の説明を整理すると、次のようにまとめることができます。

まず、日本における医療費増大による財政圧迫の問題は、ベースとなる議論としては間違いなく「少子高齢化」すなわちリソースの圧倒的不足といういかんともしがたい大きな課題によって生じているものである。

しかし、それでも細かく見ていくと、リソースの適正配分によって対応できる部分がありながらもそれに対するアクションを放棄してしまっていることによって生じているものも多分に存在している。

つまりこれは、以前の記事にて取り上げたコロナ禍における日本の「医療崩壊」の問題が、医療機関のリソースの利用配分という極めて政治的な不備が問題で「医療崩壊」という現象が生じているのであって、決して絶対的に日本の医療リソースが不足しているから生じているわけではないというあの構図と全く同じ理屈で生じているというがよく分かります。

目の前にある対処可能な「問題」を先送りしているような情けない姿勢で、それよりももっと構造的な「大問題」に対処などできるわけもありません。

私たち日本人は、「問題」は先送りすればするほど利息が上乗せされるという当然の摂理を真剣に受け止める必要があります。