
国家が破綻したらどうなるのか
2024年11月13日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
今までこのブログでは世界最大級の負債を抱える日本が国家破綻するリスクについて、「国民のための経済と財政の基礎知識」「経済成長とは何か」「Xデイ到来!」「ハイパーインフレの現実味」「アベノミクスは何を殺したか」「異次元緩和の罪と罰」といくつも記事を書いて考えてきました。
基本的には、このリスクの議論は「国民のための経済と財政の基礎知識」の著者である高橋洋一氏のような「リフレ派」と「Xデイ到来!」の著者である藤巻健史氏のような「財政規律派」に分かれるわけですが、これらの両方の主張を比較検討した結果、私の中では確実に「財政規律派」の主張を支持しています。
つまり私は、このままの状況を改善しないなら「国家破綻」は免れないという主張のほうが論理的な説明に成功していると確信しているわけなのですが、そんな藤巻健史氏の本の中でも、ではそうなった場合、私達はどんな状況に置かれるのかという具体的なイメージについては言及がありませんでした。
そこで、このまま日本の政策が変わらず、国家破綻の憂き目にあったとき何が起こるのかについても知っておくべきだと思い、「金融パニック:国債は単語の日本を予測!」という本を読んでみました。
以下に、2001年に国会で怪文書として出回ったとされる「ネバダレポート」に示された8項目を本書から引用します。ちなみに、このレポートはIMFに近い筋から出されたものとされています。
① 公務員の総数と給料はいずれも30%カット。ボーナス無し
② 公務員の退職金は全額カット
③ 年金は一律30%カット
④ 国債利払いは5~10年間停止
⑤ 消費税率を20%に引き上げ
⑥ 課税最低限を引き上げ、年収100万円以上から課税
⑦ 資産税を導入し、不動産は公示価格の5%、債券・社債は5~15%課税
⑧ 預金は一律ペイオフ。第二段階で預金を30~40%カット
そして、その国債破綻を皮切りに日本国民の生活状況は急激に悪化していきます。
今までの前例として太平洋戦争敗戦後の日本(1945年~)とソ連崩壊後のロシア(1990年~)を参考に、国家が主体的に「善政」を行うことができない場合という【最悪のケース】を以下に要約引用します。(一部加筆修正)
「この8項目の中で一番恐ろしいのは⑧です。ペイオフとは保護される預金額を最大1000万円に限定するというものですので、どんなに大きな預金を銀行に預けていたとしても、1000万円にしか残らないということ。そして第二段階でそこからさらに30~40%カットということですから、大金持ちでも600~700万円しか現金が残らないことになります。その後、IMFが乗り込んでくると、超円安と100倍程度のハイパーインフレが起こり、ペイオフで残った1000万円すら10万円の価値となり、失われた分は国債(国の借金)の穴埋めに使われることになります。しかも、IMFの救済額は100兆円程度で、当然ですがそれは『融資』で、将来利息を上乗せして返済しなければなりません。つまり、破綻国家は結局のところ、すべて自前のお金で立ち直らなければならないということです。ということはIMFによる救済の本質とは、破綻国家の救済ではなく、その破綻国家と取引のある世界中の国の連鎖倒産からの救済ということになります。その動きとともに、外国勢は一斉に株や債券など円建て資産を外資建て資産に変えるため、超円安とハイパーインフレはなお一層加速します。しかも、外国勢だけでなく日本国民も自分の資産を守るために同じ行動をとります。これによって当然ですが、外国勢も一時的に経済的ダメージを負います。しかし、超円安は日本の資産の大バーゲンを意味しますので、破綻前の1/100といった超安値で日本の株や不動産が売りに出されることとなり、外国勢はそれらを根こそぎ取得することで一時的に被った損失の穴埋めをすることができます。そうして大部分の日本資産オーナーとなった外国勢の下、日本国民は永久に働き続ける小作人のような存在になってしまいます。」
では、国債破綻の後でもこのような状況を回避するために国家が主体的に「善政」を行うことができればどのようになるのでしょう?
以下にその【最良のケース】を要約引用します。
「それは物価が3倍程度におさまるケースです。1970年代のオイルショックは2倍程度の上昇で確かに大変ではありましたが当時の人々のほとんどが人生の一大事というほどではなかったという事件でした。そう考えると、物価が3倍という事態はなんとか乗り切れるギリギリの苦悩の経験といったところでしょうか。それを実現するポイントはなんと言っても外貨の枯渇を自国の力で回避するということです。とりわけヘッジファンドなど不道徳な海外からの投機集団を撃退する対策を用意するのです。そしてそれを予め公開しておくことです。日本側が投機集団に猛反撃するとなれば敵側は大いに警戒するからです。つまり彼らと駆け引きをするのです。これは私が専門とする現代の兵法である『ゲーム理論』による発想です。国家破綻で最も怖いのは、自国民を含めた世界中が日本円を信用しなくなり、我先に円売りに走ってしまうことで、実体経済の状態とは無関係に超円安・ハイパーインフレがとめどもなく進行してしまうことです。その世界中の疑心暗鬼の拡大を投機集団は狙ってくるわけですから、そうさせない確固たる意志と計画を事前に世界に明らかにして納得してもらうということが重要です。それによって、純粋に日本経済の実力を見積もってもらい、それが最悪60%減くらいに抑えられるようにするというものです。これは韓国の通貨危機(1997年~)の時の50%減よりも少し悪い程度です。是が非でも2~3倍のインフレ状態のうちに為替を1ドル=300円程度に食い止めなければなりません。ここに勝機があると考えるのは、海外から日本市場に投じている資金が500兆円以上、日本株式の外国人持ち株比率は3割を超えているので、海外勢にとっても円売りで稼ぎまくるか、自分たちの円資産を防衛するのかという大きな二律背反が存在するからです。つまり、自分たちの円資産を守りたいという海外勢を味方につけられる可能性です。この日本側に存在するわずかな勝機をものにするというのが、ここでいう『善政』です。とはいえ、これは日本政府や日銀が事態を極めてうまくコントロールすることに大成功した場合の展開だということです。」
どちらにしても、この国にはもはや、「リフレ派」VS「財政規律派」などという議論をしている暇などなく、一日でも早く「抜本的」で「常識的」な財政再建策をとるしか方法がないことは明らかです。
そう考えると、日本人って、目先の負担を圧倒的に大きく、将来の負担を圧倒的に小さく見積もって、後でとんでもない痛手を負うようにできている、つくづく残念な国民なのだと思い知らされます。