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国立大学で今何が起こっているのか

2023年7月19日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

少し前(2023年2月14日)に東京芸術大学が「予算不足のために大学が所有するピアノを売却する」というショッキングなニュースがありましたが、先日(2023年7月16日)に今度は我が母校である一橋大学も似たような残念な状況にあるという以下のような記事がありました。

「学附属図書館は燃料費高騰を理由に、大閲覧室の開室日を制限すると発表した。これによると、試験期間の土日(5月27日から28日、7月15日から16日、10月28日から29日、12月16日から17日)及び休業期の平日(8月5日から9月10日、2024年2月6日から3月31日)には、大閲覧室が利用できなくなる。今回の決定に踏み切った理由や、現在の大閲覧室の利用状況について、本学担当者は、『昨年度以降の社会情勢に起因する資源価格の高騰と円安の進行に伴うエネルギー価格の上昇が、大学運営に少なからぬ影響を及ぼしている中でも本学附属図書館は、全学の電気使用量の約2割を占めており、大閲覧室だけでも一定の期間閉室することができれば、電気使用量や燃料費の削減に一定の効果が見込める』と述べている。一方で利用者らからは、大閲覧室の開室制限により、閲覧席不足などの問題が生じるのではとの声もあがった。それに対し、担当者は『図書館全体として閲覧席が不足する状況にはならない』との見方に立つ。その理由の一つとして、5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の影響で半数に制限されていた閲覧席が元の数に戻ったことがある。これにより、大閲覧室以外でも400席以上が利用可能となった。また、現状図書館の利用者数自体が新型コロナウイルス感染症の流行前よりも少なく、閲覧席にはかなり余裕がある。そのうえ、今回大閲覧室が閉室される休業期については、例年利用者が授業期間の3分の1から4分の1となるという。以上を踏まえれば、閲覧席の不足は生じないというのが本学附属図書館の考えだ。」

この記事の中にある「大閲覧室」というのは、要するに「自習室」で、私は以下の写真にみるようにその厳かでアカデミックな雰囲気が大好きで、大学の中で最もお気に入りの場所でした。

東京芸術大学一橋大学も、どちらも国立大学でしかも前者は「芸術」、後者は「社会科学」というそれぞれの分野ではトップレベルの名門校と言われている大学です。

それなのにもかかわらず、ピアノと図書館というそれぞれの大学が最も重要視すべき「教育環境」の維持に直結する部分に手を付けるという決断に至ったことに、私だけでなく卒業生を含む関係者の多くが「残念さ」や「情けなさ」といった言葉だけでは形容しがたい複雑な感情を抱いたと思います。

というのも、私は以前に「アメリカの強みと弱み」という記事の中で以下のような指摘をしたことがあります。

「著者の明石氏は、自分のアメリカ留学の体験を基に、アメリカという国への感動を次のように表しています。

『アメリカについては大学でみっちり勉強していたつもりだったが、本物のアメリカを見てやはり驚いた。圧倒されるというよりも、感銘を受けた。(中略)特に、アメリカの富、繁栄だけでなく、外国人や留学生を受け入れる懐の広さに感心した。アメリカ人は気前よく外国人を迎え入れる。一介の若造の留学生として、それには感動した。このアメリカ留学の体験を通じて、私は感じた。日本は何という国と戦争をしていたのだろう、我々は全く勝ち目のない、絶望的な挑戦をしていたのだ。こんなすごい国と戦っていたとはなんと愚かだったのだろう、と。』

私自身も、自分のアメリカ留学体験にてその感動を味わいました。

著者が言うように、大学における留学生を受け入れる懐の広さも然りですが、図書館、美術館、博物館といった文化芸術に関する施設の規模とそれを惜しげもなく、自国民だけでなく外国人に対しても平然と無料、もしくは非常に低料金で24時間365日公開するということに感動しました。

このことは、優秀な人材を世界からアメリカに呼び寄せるうえで圧倒的な強みになっていることは間違いありません。」

片や自国民だけでなく外国人に対しても平然と無料で図書館を24時間365日公開するアメリカの大学と、自国民どころか授業料を払っているその大学の学生に対しても制限を設けざるを得ない日本の国立大学を比べてしまうと、毎年話題になる「世界大学ランキング」における日本の大学の凋落スピードは、実態よりもずっと緩やかなのではないかと勘繰らざるを得なくなります。

 

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