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地面師

2024年10月27日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ネットフリックスの「地面師たち」が大ヒットを飛ばして、忘れかけていた「積水ハウス50億円事件」が再び多くの人に思い出されることになりました。

映画としては非常に興味深かったのですが、ちょっと脚色が過ぎていて、本当のところどうだったのか詳しく知りたいという思いが募ったため手にしたのがこの本「地面師」です。

帯には、「身近に潜み、静かに動く、冷酷な”ビジネス”としてのリアリズム。不動産関係者、銀行員、前ビジネスパーソン必読の書!」とあり、「国内留学」とは別部門として「不動産賃貸業」を営む大芳産業株式会社の経営者としては読まないわけにはいきませんでした。

本書には昨今の重大地面師事件合計6件の詳細が生々しく記されていますが、それらをここで紹介することは控えます。

その代わりに、本書よりそもそも「地面師」の定義及び始まりとその暗躍の歴史に関する記載を引用することでその概要を理解することを目的としたいと思います。

まずは、定義及び始まりについてです。

「大辞林では、地面師を他人の土地を自分のもののように偽って第三者に売り渡す詐欺師と解説されている。古くは70年以上前、終戦間もない混乱期のドサクサに跋扈した。東京や横浜、大阪や神戸、福岡や鹿児島、、、日本の主要都市がB29の爆撃にさらされ、土地の所有者一家がそろって命を落とすケースが少なくなかった時代だ。家屋は瓦礫と化し、家を建て直す者がいなかった。県庁や市役所などの自治体は戦火に見舞われ、書類が消失して機能しない。そこで暗躍したのが、終戦後の地面師たちの始まりだとされる。瓦礫だらけの焼け野原に縄を張って土地の所有者に成りすますのは、わけもないことだった。法務局では持ち主本人の氏素性を確認し、不動産登記の申請をチェックする役人の手が圧倒的に足りず、地面師たちは造作なく関係書類をでっち上げた。土地を転売してひと財産築いた輩も少なくないと聞く。それらがかつての地面師だった。」

その後日本社会は復興を遂げ、経済発展をつづける過程において再び地面師たちが出現する場面が訪れます。

その場面には以下のように大きく分けて三回のピークがありました。

第一のピークは、1980年代後半のバブル期、

第二のピークは、2000年代前半のITバブル期、

そして第三のピークが現在も継続する、アベノミクスによる大幅な金融緩和を背景にした大都市圏における不動産バブル期です。

彼らは、戦後すぐの「瓦礫だらけの焼け野原に縄を張って土地の所有者に成りすます」ような単純なやり方から、時代の変遷とともに複雑巧妙化し、最終的にネットフリックの「地面師たち」のように、不動産のプロ中のプロであるはずの大企業をも手玉に取ってしまうような組織的犯罪集団にまで進化することとなったのです。

本書における重大地面師事件合計6件のルポは、冒頭で書いたような「脚色が過ぎる」ドラマとは違って、現実のストーリーを補足する詳細な情報が添えられているため、却って生々しいイメージが頭に浮かんできて、被害者のみならず、警察・検察をも翻弄するような計画性と綿密性を備えるまでに進化していることがよく分かるものでした。

最後に、不動産事業を営む私自身として最も学びが大きいと思った一節を本書より引用したいと思います。

「利益を求める取引に心の隙が生まれる。そこを巧みに突くのが地面師である。」

事業者である以上、「利益」を求めるのは当然のことですが、その利益の頭に「相応の」「身の丈に合った」「両者納得のいく」といった言葉が付く範囲でそれを求めることを心がけようと改めて思った次第です。

 

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