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後継者不足時代の事業承継

2026年7月12日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

事業の承継、特にオーナー企業もしくはファミリー企業における承継に関しては、このブログでも「かつての大塚家具にあった知恵とは」という記事において取り上げ、

「一流の都市銀行出身で『知識』という点で言えば圧倒的に有利であったはずの娘が、(2015年に父 勝久を解任したあと)実践の経験に乏しく『知識』のレベルにとどまった段階で経営判断した結果、大塚家具という企業自体を自らの手から離さざるを得なくなった(2019年に救済に近い形でヤマダ電機による子会社化)。」

というエピソードに触れました。

それから、6年の時を経て大塚久美子元社長本人による「事業承継を当事者の視点で考える」というコンセプトの新書本「後継者不足時代の事業承継」とのことなので、大変興味深く読みませていただきました。

著者にしてみれば、このようなタイトルで私見を述べられるのは非常に勇気がいることだったと思います。

それでも、ご自身の経験、特に「失敗」にまつわるご経験を明らかにされるのは、ファミリービジネスに関わる課題解決の必要性を強く認識されているためだと考えます。

以下に、著者にそう思わせた日本のファミリービジネスの課題とその解消にむけての著者の認識を本書より要約引用(一部加筆修正)します。

「日本の企業の90%以上がファミリービジネスであり、その中には100年以上の長寿企業が多く、一族が所有のみならず経営にも携わっている割合が高いのが特徴です。創業者一族が持つ固有の価値観、ビジョン、目標の存在がその企業を他と区別し、顔の見える存在にしています。その個性が企業にとっての無形の資産となり、社会にとっては多様性の源となることでイノベーションが促進されるという事実があります。しかし一方で全く同じ理由から、経済合理性の軽視や過度な保守性の保持につながったり、一人の経営者が長期間にわたってリーダーシップを持ち続けることで不正や縁故主義につながることで逆にイノベーションの阻害要因となることもあります。ファミリービジネスにおけるこの負の側面に対応するためには、適切な事業承継による世代交代が最大の課題ということになります。」

その上で本書を読み進めていくと、すぐに印象的な部分に目が留まりました。

それは、2015年の「騒動」に関して、「高級路線」の会長側と「低価格路線」の社長側との事業戦略のぶつかり合いによる「親子喧嘩」というマスコミの報道は誤っており、あくまでも引退後の自分の居場所を確保しつつ、創業当時から恩義のある関係者への返報を目的とした「創業の地への大規模投資」を進める会長側の計画に経営者として反対をした社長側の戦いであったという事実をはっきりさせたいと言及されていたことでした。

これは私の「かつての大塚家具にあった知恵とは」の記事の前提となっている内容を、後になってこのように書籍の中で明らかにするというのは、その意図があるのかは別として非常に一方的であり、また私たち外野からするとかなり唐突に感じざるを得ませんでした。

もちろん、この著者の告白が事実なのかそうでないのかを明らかにする術を私は持っていませんが、少なくとも、実際には現時点で大塚家具は創業家の手から離れている一方で、父の匠大塚はいまだ手を離れておらず、顧客に価値を提供し続けられているという事実があります。

このような印象を持たざるを得なかったという意味では残念でしたが、だからと言って本書の「ファミリービジネスに関わる課題解決」に資する書としての存在価値がゼロになるものではありません。

ですので一つ、私が本書の中で最も「そのとおり!」と思った部分を以下に引用します。

「日本のファミリービジネスのイメージは、現代の会社法上の会社や西洋的な事業のあり方より、『家』制度における家が営む『家業』のあり方に近いように思います。そして、その『家業』も、家の財産たる『家産』も、家そのものに帰属します。『家』は現代の法人のような存在と考えればよいでしょう。ただし、『家』という法人には株主のような所有者がいません。『当主』は所有者ではなく『家』という共同体を継続させるため、家業を運営し、家産を次世代につなぐための管財人のような存在です。家産が『当主』ではなく『家』に帰属しているので、『当主』であっても『家』そのものを売り払うというような勝手は許されません。『当主』は『家』という共同体に使える存在なのです。」

これは、私自身、先代から子供の頃より言われ続けてきたことであり、ゼロから創業したのではなく、規模の大小にかかわらず先代から企業を受け継ぐことになった全ての事業承継者がわきまえなければならない「原理原則」だと思ってきました。

「当主」は所有者ではなくあくまでも「管財人」もしくは「番人」に過ぎない。

この意識を持っている限りにおいては、先代も承継者もぶつかり合うことなく、スムーズな事業承継が可能になるはずなのです。

しかし、戦後の日本においてこの「家の論理」が破綻してしまったことで、所有や経営においては同じような形であっても、「継続」や「継承」の考え方が最初から組み込まれない形が一般的になってしまったのが日本のファミリービジネスだと指摘します。

著者はそのことを分かっていながらも、やはり事業継承に失敗し、「『家』そのものを売り払うというような勝手」に近い選択を最終的にしてしまったのか、本書を読んでいてその「ちぐはぐさ」がとても気になりました。

しかしながら、経営者にとっての最重要項目が「手放すことを学ぶこと」であるというその真理を私自身が再確認できたという点において、勇気をもって本書を執筆された著者に心から感謝したいと思います。

 

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