楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考
2025年1月5日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
かなり久しぶりに一橋大学の楠木先生が「楠木建の頭の中」というタイトルで「戦略と経営についての論考」と「仕事と生活についての雑記」いう二冊の新刊を同時に出されましたので、発売と同時に「戦略と経営についての論考」を購入していましたが、年末年始のバタバタにかまけて読めていませんでしたが、三が日を過ぎてようやく読了がかないました。
「仕事と生活についての雑記」についてはとりあえず、前者の読了を経てその感想次第で購入しようと考えていました。
まあ、楠木先生の著作に今までハズレはひとつもなかったので絶対的な信頼はありましたが、それでもさすがです。読了を待たずに、読みはじめすぐにアマゾンでポチることになりました。
ということで今回は、「戦略と経営についての論考」について書きたいと思います。
いつもながらではありますが、まずは楠木先生の自らの「経営学者としての立ち位置」の表明がしびれます。
「僕は自分で経営をしたことはありません。これからもするつもりはありません。この仕事を初めて30年以上、考えては書くという作業に明け暮れてきました。あっさり言って、口先だけの仕事です。それでも口舌の徒なりに大切にしてきたことがあります。現実の企業に合って経営を担う人々に少しでも有用な論理-いろいろあるけれど、要するにこういうこと-を提供したい。実業に従事していない僕には考える時間がたっぷりとあります。日々の仕事で忙しく、ゆっくりと考える時間がない経営者に成り代わって本質的な論理を考える-思考代行業こそが自分の仕事だと心得ています。」
そして、どんなことを実際に考えているのかというのが次のように語られています。
「経済学の中核的思想は、完全競争下での余剰利益はゼロになり、その時に世の中の効率は極大化するというもの。この学問においては完全競争を良いものと考えます。ところが経営学は長期利益を追求するためにいかにして経済学が想定する完全競争の前提を崩すのかを追求する学問という意味で正反対を向いたものです。つまり、競争相手と違うことをすることで情報の非対称性を作り出す方法を考えるものです。しかし、インターネットの登場以来、そのことがそれ以前と比べて圧倒的に難しくなってしまいました。それでも、それに成功し強い企業であり続ける企業は存在しています。その背後にある戦略と論理は何か。私は経営学者としてこの問題をずっと考えてきたのです。(一部加筆修正)」
本書は、このようにご自身の仕事を定義する著者が、いままで新聞や雑誌、オンラインメディアなどで発信してきた内容を一冊にまとめたものです。(と言っても実際にピックアップされているのは2010年以降の比較的直近のものがほとんどですが、それらは過去からの一貫した論旨の集約という意味でしょう。)
私は、本を読むときにも「A6ノート」を常に横において、自分が気になった箇所をそこに書き写すようにしています(このブログにおける引用の多くはそれを採用)が、本書に関してはその書き写しが多すぎて、なかなか先に進めなくて困ってしまうほどでした。(笑)
まさに、著者の30年以上にわたる経営学者としての仕事の現時点での集大成とでもいうべきものということになるかと思いますが、著者がその職責を十二分に果たされたことが証明されていることを確認することができました。