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新しい銀行の形

2024年10月28日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

「本屋」の新しい形から始まったアマゾンが、最終的にあらゆる「小売り」の新しい形へと変貌したのと同じようなことが、「銀行」においても日本から遠いところで、着実に進行しているようです。

先日(2024年10月24日)の日経新聞の記事で南米でデジタルバンクを展開する「ヌーバンク」なるものを紹介していました。

以下、この記事を引用します。

「ブラジルの新興デジタルバンク、ヌーバンクが急成長している。低所得者向けの金融サービスをメキシコやコロンビアにも広げ、顧客は1億人を突破し5年でおよそ10倍になった。銀行免許が無くてもデジタル技術を駆使し、南米で伝統的な金融機関に取って代わるインフラになりつつある。顧客拡大の糸口はヌーバンクのスマホアプリで利用できるクレジットカードだ。このカードを給与振り込みなどに使うデジタル口座とひも付け、アプリ上で株式などの金融商品の売買、保険加入、ネット通販の買い物などさまざまなサービスが利用可能になる。デジタル口座は決済用口座と固定金利付き預託証書を組み合わせて銀行口座に似た仕組みをつくり、提携金融機関のATMから現金を引き出すこともできる。クレジットカード事業による分割払いの金利収入や加盟店手数料、個人向け融資の金利収入など稼ぎ方は多岐にわたる。2023年は売上高が80億ドル(約1.2兆円)、最終損益は10億ドルの黒字になった。ヌーバンクは自らを決済事業者で銀行ではないと説明する。多面的なサービスで急成長を続ける背景には技術力がある。従業員は7000人を超す。50%以上がテクノロジーや分析を担う。従来の大手銀行は口座開設時に入念な手続きを求められハードルが高かった。広大な国土を持つブラジルでは多くの自治体に大手銀行の支店がなく、サービスが行き届かない問題もあった。ヌーバンクは8月の決算説明会で『現在、ブラジルで銀行免許を取得したり申請したりする必要はないと考えている』と述べた。」

わたしはこの記事を読んで、事業とは何なのかという根本的な疑問に直面した気がしました。

その疑問とは、重要なのは「銀行」の定義ではなく、私たちが「銀行」に対して何を求めるのか、つまり「銀行の本質」の部分をその組織が顧客に提供できるかどうかではないかということです。

従来の「銀行」と「ヌーバンク」の関係は、「店舗で店員さんが顧客に対して商品を提供すること」という「小売り」の定義ではなく、「売り手と買い手をマッチングし、商品を売り手から買い手に届ける仕組み」という本質をアマゾンが従来の「小売業者」よりもずっと効率的に行うことができるからこそ破壊的イノベーションだと言われているのと同じです。

ただ、このヌーバンクの「効率性の源」が一体何なのかですが、この記事の内容だけではそれ程の急成長の秘密を説明するには少し情報が足りないような気がしました。

そこで、改めてこのヌーバンクを詳細に説明しているサイトを探したところ、Newspicksの記事がヒットしまして、その「効率性の源」についての言及を見つけることができましたので以下引用します。

「ブラジルでは15歳以上の人口のうち、30%が銀行口座を持たない。この比率は、コロンビアでは55%、メキシコでは65%に達する(2017年)。3ヵ国合計で1億3400万人が銀行口座を持っていない。金融サービスは、もっと幅広く民主化されるべきだとヌーバンクは考えている。なにしろ、ブラジルやメキシコ、コロンビアでは大手銀5行が銀行業務マーケットの70~85%を支配する寡占市場で、競争にさらされてこなかったのだ。ヌーバンクの試算によると、大手銀の顧客が負担するサービス利用コストは、月額1600円を超える。それに対して、過剰な支店や人員、複雑で高い手数料を身にまとわない、まさにヌード(裸)の銀行という意味が社名に込められたヌーバンクはスマートフォンで手軽に口座を開設でき、それとひもづいたクレジットカードが発行され、クレジットカードローンや零細企業向けの貸し出しもする。かくして、これまで見過ごされてきた中間層以下の巨大なマーケットを取り込んでいるのだ。」

銀行口座の普及率がブラジルとは比べ物にならないほど高いはずの日本でも、もしこの圧倒的に低コストで「銀行の本質」をクリアしているヌーバンクが進出してきたときに、アマゾンが上陸してきたときと同じようなことにはならないと、だれも言い切れるものではないような気がします。

 

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