日本の物流の行方
2024年1月3日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
「物流の2024年問題」という言葉は、普段物流に関係がない方にもずいぶん知れ渡り、もはや「常識」に近いテーマになったと思われますが、その2024年が遂にやってきてしまいました。
この重大な問題を日本は乗り越えることができるのか、それがまさに具体的に問われるわけですが、そのことについての記事が「クーリエジャポン」にありましたので取り上げたいと思います。
まず、念のため「物流の2024年問題」とは何かをおさらいとしておきましょう。
日本政府は2024年4月以降、トラックドライバーを過酷な長時間労働から解放するため、彼らの時間外労働に上限規制を設けます。しかし、このことはただでさえぎりぎりで回してきた物流業界全体が一層利益の圧迫を余儀なくされることはもちろんのこと、この規制によって本来守られるべきトラックドライバーの収入の減少にもつながることが心配されています。また、そのことが、日本のスピーディーな配送システムの崩壊につながるのではないかという懸念が取りざたされており、もはやこの「2024年問題」は、物流業界の問題にとどまらず、日本全体の社会問題だと言えます。
以下、記事を要約します。
「NX総合研究所でリサーチフェローを務める田阪幹雄は2024年問題について、『ハードランディングになるのでは』と不安を隠さない。日本では広範な産業において、ワーク・ライフ・バランスの余地がほとんどなく、労働者を極限状態にまで追い込み、過労死までもたらしてきた労働文化が根を下ろしており、物流業界においても効率の良い代替策の導入は遅々として進んでいない。全日本トラック協会役員の星野治彦は、業界間のもたれ合い的な体質について、『この業界を一気に変えようとしても、そう簡単には変わりません』と話す。先進諸国でよく見かける大型トラックは付け替え可能なトレーラータイプがほとんどだが、日本のトラックはそうではない。段ボール箱の大きさもバラバラだ。オレンジを出荷する段ボール箱のサイズだけで400種類もある。流通経済大学で物流システムを研究する矢野裕児は、『日本の物流業界は標準化が非常に遅れている。パレットのサイズも標準化されていないし、出荷側も荷受側も、標準化されたデータ共有システムを使用していない』と説明する。こうした規格不統一のせいで、トラックドライバーは自らの手で荷物の積み込みや荷下ろし作業をするしかない。複数の専門家は、『他国ではフォークリフトでおこなわれる作業を日本ではトラックドライバーが肩代わりし、しかもその分の労賃は契約に含まれていないとして、支払われない場合がほとんど』と指摘する。日本政府は現行の労働慣行を徐々に変えていき、トラック業界への打撃を少しでも緩和しようという姿勢だ。国は荷主事業者に対し、トラック運送事業者に適正な運賃を支払うことや、トラックドライバーの荷待ちや荷役作業時間を減らすため、作業方法の見直しと効率化を要請した。また、鉄道や船舶などの代替輸送の利用をもっと増やすことも要求している。さらに大型トラックの高速道路における制限速度についても、従来の時速80キロから100キロへの引き上げを検討している。岸田文雄首相はトラックドライバーの賃上げに取り組むと述べ、物流事業者に対し、自社システム改修費の補助を約束した。宅配の利用者に関しては、ドライバーの負担増となる再配達を減らす必要性に言及し、荷物の配達予定時間には家に居るよう呼びかけた。」
この記事を読んで真っ先に感じたことは日本政府のやり方は「順序が違う」のではないかということです、
確かにトラックドライバーの労働環境の改善は絶対的に必要なことです。
ですが、その問題の根源は、「荷主が十分な運賃を運送会社に払っていない」ことにあり、だからこそトラックドライバーの職にとどまっている方々は、規定時間を超えてまでも働いて必要な収入を得ようとしているわけです。
ならば、日本政府がすべきは、トラックドライバーの労働時間を規制して彼らの収入を減らすことを先にして、後から「国は荷主事業者に対し、トラック運送事業者に適正な運賃を支払うことや、トラックドライバーの荷待ちや荷役作業時間を減らすため、作業方法の見直しと効率化を要請」することではなく、その逆をやるべきであるはずです。
つまり、まずは政府が荷主事業者を説得して、運送会社が十分な報酬を得られるような環境を確立し、そこで働くドライバーさんたちが十分な賃金単価が得られる状況を作った上で、労働時間を規制するという順序を踏むのが当然にしてあるべき形だと思うのです。
年始早々、能登の震災や羽田での航空機衝突事故など今年のスタートは非常に厳しいものとなったことから国民の政府の政策を見る目は今まで以上に厳しくなることは間違いありません。
あらゆることに当事者意識をもって誰もが納得できる政策を実行していったいただきたいと思います。