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日本人の9割が知らない遺伝の真実

2024年8月14日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

このブログを長期にわたって読まれている方はご存じかもしれませんが、私は「三つ子」の親です。

その三つ子はおかげさまで中学三年生となりました。

三つ子と言っても、うちの子供たちは「三卵性三胎児」でしたから、純粋に遺伝子的には普通の兄弟が三人一度に生まれてきたのと一緒なので、遺伝子が全く一緒ではありません。

ただ、「長女」「長男」「次男」という生まれた順序による親の接し方の違いという環境面の変数を極力排除できたため(男女の差は多少あるかもしれませんが)、「遺伝子の影響」のみを見出しやすいケースであることは確かだと思います。

しかし、実際には三人は性格、学業成績、好み、体格が全く違う(特に性格は普通の兄弟以上にバラバラ)のです。

この違いは物心ついてすぐの頃から一貫しているので、私は「遺伝子」の影響はあまり大きくないのではないかという感想を持っています。

ただ、だからこそ「遺伝子」に対して興味を抱くようになり、「遺伝」に関する面白そうな本や映画を見つけるとチェックするようにしてきました。

少し古い本ですが、今回も「日本人の9割が知らない遺伝の真実」というタイトルにひかれ読んでみましたのでご紹介します。

本書は「行動遺伝学」の観点から議論されています。

この「行動遺伝学」とは、遺伝と環境の影響を分離して実証的・科学的に「遺伝」の影響の大きさを明らかにしようとする学問です。

著者はもともと、「才能は生まれつきではない」という強固な環境論者であったことから、そのことを立証するためにこの学問の門をたたき、その研究者となったそうです。

ところが、その研究を進めていった結果、「(知能を含め)才能は遺伝の影響を受けている」という結論に達してしまったと言います。

ちなみに、その研究において著者が行った手法は「双生児法」とよばれる以下のようなものです。

この手法はシンプルで、同じ環境で育った遺伝情報が100%同一の「一卵性双生児」と50%が共通する「二卵性双生児」に対して、各種能力検査、精神疾患、アルコールやたばこの依存など様々な側面についてアンケートや行動観察などを行い、結果を点数で表します。

そして次に、これらアンケート項目ごとに一卵性双生児ペアのグループ、二卵性双生児ペアのグループに分け、X軸に兄弟の一方の点数、Y軸にもう一方の点数としてそれぞれのペアをプロットしていきます。(どのペアについても点数が完璧に同じであれば、プロットした点数は斜め45度の直線状に位置することになります。)

結果はこのようなものになりました。

実際には、このように一卵性と二卵性のどちらでも、兄弟が完璧に同じになることは稀です(でもないことはない)が、ある程度の類似性は感じられます。そして、一卵性と二卵性とを比べると明らかに一卵性のペアの兄弟間の類似性が高いということが分かります。

また、こちらはそれぞれの調査項目ごとの類似性の相関関係を表したものです。

ちなみに、相関関係は、ペアが完全に同じ点数なら1になります。

その上で見てみると、一卵性において、最も相関関係が高いものとしては、「指紋のパターン」「身長」「体重」「音楽」「数学」の項目が、0.9を超えたり近かったりしていて、これらについてはかなり強烈な類似性があることが分かります。

そして、二卵性においては、「数学」を除いて、その50%程度で、遺伝子の割合とかなり一致が見られます。

すなわち、著者の当初のころや私の感覚とは全く異なり、「才能は遺伝子の影響をうける」という結果となっています。(ただ、数学が一卵性と二卵性で全く異なる様相を呈しているのが不思議ですが。)

ちなみに、多くの方が知りたいと思うであろうIQ(成人期初期)については、一卵性において0.82、二卵性においては0.48で、こちらもかなり「才能は遺伝子の影響をうける」という結果だといえるでしょう。

このような結果を目の当たりにすると、うちの三つ子のケース、特に男の子二人のケースは、少なくとも50%の類似性は表れるはずの体格も含めて、まったく異なっているので(あっ、数学の結果については当てはまってる?)統計的な外れ値と考えるべきなのかもしれません。

改めて、この調査結果をどのようにとらえるべきかについて考えてみたいと思います。

たとえば、現代社会において大いに幅を利かせている「IQ」といった項目でも一卵性において0.8を超えるということなので、あまりに遺伝子の影響が大きく、「勉強しても無駄」ということになりかねないという心配がありそうです。

実際に、著者はこのことをもって「学力や知能は遺伝する、そして教育は遺伝的な格差を拡大する方向に作用する。」というそれをなぞるかのような評価をしています。

しかし、よく考えてみましょう。

一卵性双生児がこの世の中にどれほどいるでしょうか。明らかに彼らはレアケースといえるでしょう。

そして、うちの三つ子のケースもそうですが、二卵性双生児では0.48ですから、50%以上は環境・努力の影響下にあるということです。

ならば、それ以外の大多数のケースでは基本的には二卵性双生児と遺伝子的には同じであり、またその環境・努力の影響下にある幅はそれよりも大きいわけですから、決して「勉強しても無駄」ということにはならないはずです。

その意味で言えば、著者が言う「学力や知能は遺伝する、そして教育は遺伝的な格差を拡大する方向に作用する。」という言葉は、現在のような学校の成績が唯一の「能力評価」という状況に対する批判であると捉えられなくもありません。

したがって、人間の才能と遺伝子の関係は、あまりに多くの組み合わせの可能性を秘めているという科学的事実を知っておくことが大切だと思います。

実社会が多様な能力によって成り立っているという事実をしっかりと受け止めたうえで、自らの中にある努力の甲斐がある部分をしっかりと見定めて、地道に自分磨きをしていきたいものです。

 

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