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「本来あるべき規制の形」とは

2024年6月4日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ダイハツ工業の不正問題は記憶に新しいですが、実はその後、国交省が自動車関連企業に「3ヶ月を目処に認証申請の不正を総点検しろ」という指示を出しており、その結果、2024年6月3日に「トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ各社から型式指定申請における不正行為が行われていたとの報告があった」と公表しました。(NHKの記事はこちら

正直なところ、「あのトヨタまでもが、、、」という驚きがまず先に立ち、その後で、だとしたら日産を除くほぼすべてのメーカーが不正に手を染めていたという意味で「規制のそもそもの意味がないのではないか」という疑問が湧き上がってきました。

以降、テレビや新聞など様々なメディアによる記事を読みましたが、いまいちこの「型式指定申請」に関する不正の本質的な部分、すなわちいったい何が問題なのかを分かりやすく説明しているものはありませんでした。(少なくとも私にとっては)

いろいろ探していたところ、ようやく完全にとはいかないまでもなんとか、この問題の意味合いがかすかに分かるような記事を二つ見つけましたのでご紹介します。

一つ目は、そもそもダイハツを含め多くの企業が当たり前のようにこの規制に関する不正を行えてしまった理由についてですが、こちらの毎日放送のWEB記事から以下要約引用します。

「認証っていうのは、『型式指定』という車を製造するための許可書をもらうための認証なんですよ。その認証は多岐にわたってあります。あまりにたくさんあるので、担当する国土交通省の機関は、それだけの人数で対応できないということで、対面で行える試験が少ないんです。要するに性善説です。メーカーのデータを国側は信用して、出たものをベースに、許可を与えているというのが現状の認証なんです。全てではないですけれど。ただ抜け道があるんだったら、やり直さなきゃいけないです。考え直さなきゃいけないってことです。認証における、ある意味抜け道みたいのは同じところにあるでしょうし、今回の発覚を受けて、各自動車メーカーは徹底的に社内調査するはずなんですよ。だから現時点でなんとも言えませんけど。この後何も出てこないという可能性がゼロとは言えない。」

つまり、この問題の本質は、この検査があまりに複雑であるがゆえに、この制度が「性善説」に基づいて運用されていたという点にあるということでしょう。

また、この記事は2023年12月21日に書かれたものですので、この不正問題が他のメーカーにも及ぶことを半年以上前に予言していたということになります。

続いて、二つ目は、この不正が発覚した後も多くのメーカーが「基準よりも厳しいので安全だ」という主張を繰り返したことの是非についてですが、こちらの講談社による自動車雑誌「ベストカーWEB」の記事から以下要約引用します。

「この大規模な認証不正問題の発覚について、各メディアやSNSで議論が沸騰。中には『認証試験が厳しすぎるのではないか』『実態に即していないのでは』という声もあがっている。こうしたなかで、国の認証制度や安全性能に詳しい自動車ジャーナリストの清水和夫氏は次のようにしてきます。確かに『(法規や実態よりも)厳しい試験だったので安全性は担保されている』とメーカーはいうが、安全基準はリアルワールドの事故実態に即して決めるべきであると考える。今回の不正問題で、たとえば基準よりも重い1.8tのスレッダーのテストはアメリカ向け要件だが、より厳しいからより安全だと言いたくなるが、(その試験をクリアするために)クルマは重くなり、コストはかさみ、燃費は悪化する。なによりも(より重い)鉄の鎧を着たクルマが走ることになると、(そのクルマに衝突する可能性のある周囲の)小さいクルマは迷惑だ。実際問題、軽カーにとっては硬すぎるクルマにぶつかることになる。また、『(試験での)衝突速度を高めると安全になる』というのも幻想だ。エアバッグの出力を高めることになるので、実験時よりも低い速度でぶつかったときはエアバッグの副作用で乗員への加害性は厳しくなる。つまり、衝突試験の速度はリアルワールドに物差しを当て、死亡重症事故が多いケースに的を絞ることが重要となる。実際問題、安全性基準は国連の下部組織である委員会で議論されるが、日本は共同議長国でもある。そのため、日本の事故実態を考慮した日本案も提案している。」

清水和夫氏の主張としては、メーカーの言い分である「基準よりも厳しい試験だからより安全」というのは、必ずしも正しくなく、外国の基準に合わせるために他のメリットを削って厳しくした場合に、日本国内でのデメリットが危険な域に達することもあるので容認できるものではないということだと私は捉えました。

このように、他の国との相互認証の問題によって日本の制度に合わせることが難しいということが現実に起こっているのであれば、それは日本自動車工業会を通じて国土交通省に、そして国連に対しても規制の整合性を満たす方法を提案して、正々堂々と内外の妥協点を見つける努力をするべきではないかと思います。

どちらにしても、これは「自動車製造」という命に係わる重大な製品の検査である以上、国土交通省としてもどこからどう見ても「本来あるべき形」であらゆる規制を運用する責任がありますし、すべての自動車メーカーとしてはその基準を遵守する責任があることを肝に銘じてほしいと思います。

 

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