本物の「人間力」とはなにか
2023年10月12日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
2023年10月11日午後8時59分、藤井聡太七冠(21)が王座のタイトルを奪取し、将棋界に8つあるタイトル全て(八冠)を制覇する史上初の偉業を成し遂げました。→記事はこちら
将棋全冠制覇は1996年に羽生善治九段が成し遂げて以来27年ぶりなのですが、当時は竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖の7つのタイトルしかなく、2017年に叡王(えいおう)のタイトルが追加されてからはもちろん初めてのことなので、文字通り前人未到の偉業となるようです。
ここでちょっと下世話な話をしたいのですが、将棋に詳しくない私が驚かされたのは、彼を応援する女性ファンの多さとその熱狂ぶりでした。
私の彼に対するイメージは将棋に対してあまりにストイックである一方で、身なりについては全く頓着のなく、「イケメン」とは正反対のものでしたので、まるでアイドルに対するような彼女たちの応援のしようはいったいどういうことなのだろうと疑問に思っていました。
ところが、このフィーバーの中で様々な彼の過去の写真などがTVに出てきたことで、その疑問が解消されました。
彼は、身なりをきちんとするとかなりの「イケメン」だったんです!
女性は内面と外見の両方をしっかり見ているんだな~と感心しました。
余計な話はこれくらいにして、本題に入りたいと思います。
将棋に大した興味のない私は、彼がメディアに取り上げられるたびに将棋の内容ではなく、対局後のインタビューでの受け答えに注目してきました。
その中で語られるのは、どれだけ勝ちを重ねても、どれだけタイトルを奪取しても、常に自分に足りないところを見つけて修正し、次につなげるということのみで、どんなに世間から評価され、ちやほやされてもまったく奢らないのです。
そしてそれは今回の前人未到の偉業を成し遂げた後の記者会見でも変わりませんでした。
(インタビューは9:20~)
通常であれば、全冠制覇はこの世界を制覇した、つまり最終ゴールに達してしまったということになると思います。
実際にインタビューアもそのことを意識して「今後の目標」についての質問をされているわけですが、彼はただただ「面白い将棋を指し(続け)たい」という発言をされています。
つまり、他人が決めたゴールや他人からの評価とは無縁の「過去の自分」との比較に焦点を当てて精進する胆力を持ち続けるという宣言のように聞こえます。
私たちは今まで、様々な業界で栄華を極めたと思われる人が、世の中の無責任な評価に左右されて、自分の能力や立場とは違った方向に向かって失敗するというケースをいくつも見せられてきました。
選挙のたびに畑違いの有名人が出馬することはよく指摘されることですが、今回のジャニーズ事務所の問題でも、今まで「タレント」として努力をしてきた人間が突如、畑違いの「経営者」になることをいとも簡単に承諾してしまって事態を悪化させてしまっていますが、それこそこの胆力に欠けていることの証明のように思います。
そのことからも、この胆力こそが本物の「人間力」なのだと感じさせられました。
そういえばこれと同じことを感じさせられる人がもう一人いました。
この人も間違いなく藤井八冠と同じように本物の「人間力」を持たれていると誰もが認めるところでしょう。
約5000年前、古代エジプトのピラミッドの建設に携った人々が、ピラミッドの天井裏など、人目に触れない場所に「近頃の若者は」と書き込んでいたというエピソードがあるように、人類の歴史は年長者が若年者を経験をもとにその人間力を過小評価するというのが常識でした。
しかし、この本物の「人間力」を感じさせてくれたのがともに21歳と29歳の若者であり、年長者を含めた誰もがそれを認めているということからも、この世代は、人類の歴史上初めてこの常識を覆す可能性のある世代なのかもしれません。