核融合エネルギーの開発
2022年3月10日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
前回「チェルノブイリ原発の今」という記事の中で、人類の「核」との関わりに関して「愚かさ」と「偉大さ」の両方、すなわちそれぞれ相反する感想を述べましたが、今回は同じ「核」というテーマのうち「後者(偉大さ)」のみにスポットライトを当てて書いてみたいと思います。
というのも、先日(2022年2月22日)のニューズウィーク日本版に非常に興味深いウェブ記事にを見つけたためです。
この記事に取り上げられている「核融合エネルギー」は、人類にとって全く新しい技術であり、もしかしたら地球温暖化ストップに向けてのウルトラCになりうるのではないかと期待されています。
以下、その記事を要約します。
「欧州各国の核融合研究機関からなるコンソーシアム(EUROfusion)は今月9日、イギリスのオックスフォード近郊にある欧州トーラス共同研究施設(JET)の実験装置で、核融合によるエネルギーの生成量を大幅に更新したと発表しました。今回の記録は昨年12月に行われた実験によるもので、核融合を5秒間維持して約12メガワットのエネルギーを作り出すことに成功しました。これまでの記録は、1997年に同施設で記録されたその半分のエネルギー量でした。使用されたのは『トカマク』と呼ばれるドーナツ型装置で、JETが所有するものは80立方メートルあって世界最大です。」
何がどうすごいのかほとんど分かりません、、、
そもそも私は「核分裂」と「核融合」の違いすらまともに理解をしているとは言えなかったのでこの解説を読んでもチンプンカンプンなはずです。
ですのでこれを機会に少し調べてみました。
まず、「核分裂(反応)」とは以下のようなものです。
「すべての元素の中で最も原子核が安定していると言われる鉄よりも重い原子核を持つウラン・プルトニウムなどの原子核が、中性子との衝突によってより軽く安定しやすい2個以上の原子核に分かれる現象。その際に大きなエネルギー(熱)を出す。同時に2、3個の中性子も発生するため、連鎖反応を起こす可能性を持つ。この連鎖反応を一時に起すのが原子爆弾あり,制御しつつ進行させるのが原子炉である。」
この「核分裂」に関する基本的な知識を持った上で、本記事の中にある「核融合」に関する解説を見てみましょう。
「核分裂とは逆で、すべての元素の中で最も原子核が安定している鉄よりも軽い原子核を持つ水素などのような原子は原子核同士が融合することでより安定します。核融合反応を人工的に起こす場合は、重水素(通常の水素原子の2倍の質量を持つ水素)と三重水素(通常の水素原子の3倍の質量を持つ水素)がよく用いられ、両者が融合してヘリウムと中性子になると、大きなエネルギーが発生します。自然界での核融合は、太陽内部で熱を生み出す反応に代表されます。46億年前に誕生して以来膨大なエネルギーを生み出し続ける太陽と同様の反応を、地球上で人工的に行って発電等に利用することを目指すのが核融合エネルギーの研究開発であり、『地上に太陽をつくる研究』とも言われるのです。なお、核融合エネルギーの利点は、①重水素と三重水素の原料になるリチウムは海水中に豊富に含まれていて、日本は輸入に頼らなくてよい、②反応で発生するのはヘリウムと中性子だけで、温室効果ガスが発生しないクリーンエネルギーである、③太陽光のような他のクリーンエネルギーと比べて、気象条件や環境に左右されずに一定ペースでエネルギーを生み出せることです。さらに、核融合反応は核分裂反応のような連鎖反応がないため、原理的に暴走が起こらないので安全性が高いといえます。燃料1グラム当たりのエネルギー量は、石炭・石油・ガスと比べると400万倍にもなり、廃棄物もほぼ出しません。」
この前提知識を理解した上で、本記事の続きを見てみます。
「太陽の中心は約2400億気圧の超高圧状態で、約1600万℃の高温で水素原子同士がぶつかって核融合が起きています。地球ではそれほどの高圧状態は作り出せないため、核融合を起こすための温度は1億℃以上が必要です。地球上に存在する物質で、1億℃の物体に直接触れて耐えられるものはありません。そこで研究者たちは、高温に熱してプラズマ(気体分子が陽イオンと電子に分かれた状態)になったガスをドーナツ状の磁場に閉じ込める方法を考案しました。ドーナツ型の装置の内張りには、核融合が効率よく行われるような物質を使っています。1997年の実験当時は炭素でしたが、炭素は核融合の材料である三重水素を吸収することがわかりました。そこで、今回の実験では炭素をベリリウムとタングステンに置き換えたところ、吸収率は10分の1以下に下がり、人工の核融合エネルギーの新記録が生まれました。といっても、今回生成に成功した約12メガワットのエネルギーでは、家庭用の浴槽に入る200リットルの常温水(20℃と仮定)を沸騰させることすらできません。核融合発電の実用化は遠い道のりのようです。」
具体的な計画としては、フランス南部のカダラッシュに建設中の国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」において、世界人口の半分以上、世界GDPの4分の3以上を占める日本、EU、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が計画に関わっており、今回の記事に取り上げられたJETの10倍の容量のドーナツ型装置を2025年には完成させ、2035年に核融合を開始するというものですが、それでもすぐに核融合発電が実用化できるわけではないようです。
日本でも、国産の原型炉の運転開始が2050年という目標設定をしていますが、この2050年は日本を含めた120カ国以上がカーボンニュートラルの実現目標の年ですから、この技術が大きくその実現に貢献するという期待は持てそうにありません。
とは言え、私たちの生きているうちに「地上に太陽をつくる研究」の実用化を目にすることができる可能性があるということだけでもとてもワクワクする話ではありませんか。