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法華経の現代語訳

2020年11月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前にご紹介した「死という最後の未来」の共著者である石原慎太郎氏が本書の中で、死ぬまでになんとか成し遂げようとしていることとして「法華経」の意味を世間一般の人に理解できるような形で明らかにすることがあるということを書かれていました。

その仕事が形になり「新解釈現代語訳法華経」を出版されましたのでご紹介します。

私のうちの菩提寺は日蓮宗ですので、私自身法華経に対してはかなり親しんでいる方ではあると思います。

実際に今まで何度かその現代語訳を読もうと挑戦しました。

しかし、その「難しさ」故、そのたびに挫折しました。

その「難しさ」がどこから来るのか、その一つの大きな理由はこのブログでも何度もテーマとして取り上げていますが、「翻訳本」の難しさにあると思います。

まず法華経とは何かを調べましたら、ウィキペディアでは次のように書かれていました。

「サンスクリット語では『サッダルマ・プンダリーカ・スートラ』で、『サッ』(sad)が『正しい』『不思議な』『優れた』、『ダルマ』(dharma)が法』、『プンダリーカ』(puṇḍarīka)が『清浄な白い蓮華』、『スートラ』(sūtra)が『たて糸:経』『正しい教えである白い蓮の花の経典』という意味の漢語訳である。漢訳に当たってこのうちの『白』だけが省略されて、例えば後秦時代の僧鳩摩羅什訳では『妙法蓮華経』となった。さらに『妙』、『蓮』が省略された表記が、『法華経』である。『法華経』が『妙法蓮華経』の略称として用いられる場合が多い。」

このお経の名前の意味だけでも、理解するのがこれほど「難しい」のです。

しかも、上記の通り、まずはサンスクリット語で書かれたものを中国の僧侶が中国語訳したものを再度日本語訳にしなければならないために、余計に「難しい」ものとなるのは当然かもしれません。

本書は、法華経という非常に古い時代に書かれ、尚且つサンスクリット語という古代言語から古代中国語に一度翻訳された文章をさらに現代日本語への翻訳という難題を石原慎太郎氏が死ぬまでに成し遂げようとして完成させたものです。

実際に読んでみた本書の文章は、期待が大きすぎたこともありますが、やはり今までの訳と大差のない「難しい」ものでした。

というのも、主語と述語の対応の不明確さ、内容の重複(しかも表現が微妙の違う形で)、過剰な形容などのオンパレードで、非常に読みにくい日本語の典型例とも言うべきものにとどまっていました。

実際にはこんな感じです。

・主語と述語の対応の不明確さ:

「人間の最高者である仏たちは、この世のものにはそれぞれ自身の、肯定的な存在性というものはなく、仏の本質は、縁起の技法によって生じると知って、加えて一つの教えの手立てを説かれるのだ。」

・内容の重複:

「私たちは今、真の弟子であります。仏の道を説く声をすべてのものに聞かせたいと思います。私たちは今、本当の高弟です。」

・過剰な形容:

「過去の無量にして無辺、思いもよらず、また数えることもできないほど遠い昔に、仏がおられた。」

本当に申し訳ないですが、このような回りくどい、作文添削としてツッコミどころ満載の文が500ページにわたって書かれているのです。

そこで、あの石原慎太郎氏をもってしてもこのような意訳にとどまらざるを得ないということの真意を改めて考えてみました。

そして、そもそも「法華経」というそれ自体が神秘性を帯びた価値そのものであるものを、日本語に変換するという作業自体に限界があるのではないかと思い直したわけです。

つまり、その「重複」や「過剰な形容」などが、実はレトリックという次元にとどまるのではなく、それ自体に価値があるとすれば、それをバッサリと取捨することを訳者がやってしまっていいのかどうかということです。

実際に、石原慎太郎氏の訳文を私がバッサリと切り捨てることで、いわゆる「分かりやすい」日本語にすることはそんなに難しいことではないように思えました。

にもかかわらず、石原氏本人はそれをやらずに、この「難しい」状態で留めているということに対して、やはり石原氏自身の意志でそうしていると思わざるを得ないのです。

逆に考えれば、このような「難しい」文章を前にして、う~んう~んと苦労してその意味を見出そうとする努力こそが、その価値を見出すことなのではないか。

もっと言えば、中国語(漢語)からの現代日本語訳という横着をするのではなく、本当にその価値を見出すつもりなのであれば、サンスクリット語を学ぶことまでも視野に入れるべきなのではないか。

今まで繰り返してきた挫折とは異なり、今回そう思えるのは、やはり石原慎太郎という御仁の訳に触れたからこそだと思い直すことにしました。

 

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