生きのびるための事務
2024年8月30日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
今回はいつもと趣が異なる本をご紹介します。
それは「生きのびるための事務」というタイトルからして独特で、しかも漫画です。(偶然電車の広告にあったタイトルに引かれてアマゾンでその瞬間ポチって買いましたが、手元に届いて初めて漫画だと気づきました。)
最初から漫画だと分かっていたらおそらく手に取らなかったと思うので、たまにはこういう本との出会いも案外ありかもしれません。
読んでみた感想ですが、これが本当に「素晴らしい」ものでした。
そして、それはなぜ「漫画」なのか、そしてなぜそんな「独特なタイトルなのか」という私の疑問も吹き飛ぶほどに素晴らしかったのです。
最終的には、著者が本書の中で伝えるべき内容を伝えるには、それら(タイトルや仕様)に対してこちらが疑問を持たざるを得なかったほどに「意外」なものでなければならなかったことを十分に理解することができました。
本書ではまず、そもそも「事務」とは何かについて次のよう様々なバリエーションで説明しています。
「事務力とは段取り力」
「事務とは将来の夢を将来の現実にする技術」
「事務とは抽象的なイメージを数字や文字に置き換えて具体的な値や計画として見える形にする技術」
「事務とは好きとは何かを考える装置である」
本書では、大学卒業を前に「無計画に好きなことを思うままやって生きていく」ことを「夢」見る主人公(20年前の著者)が、「事務」のすばらしさを伝えるために突然現れたジムの指導を受けながら、「好きなことを思うままやって生きていく」ためには、「無計画」ではだめで、上記に挙げたような「事務」の力を利用しながら達成するものだのだということを理解しながら実際に達成していくストーリーが語られていきます。
この主人公が最初に思っていたように、多くの人は「好きなことを思うままやって生きていく」ということは「無計画な人生」とほぼイコールだと思っていることと思います。
ですが、実はそれが全くの逆で、「好きなことを思うままやって生きていく」人生にこそ、上記のような様々な定義で語られるような「事務(計画)力」が必要になることを納得させられる内容になっています。
それはつまり、「好きなことを思うままやって生きていく」には、そのことが他の人(世間)に「評価」されようがされなかろうが、その不確実な状況そのものを延々と継続することが求められるわけで、それが冒険的なものであればあるほど、「最悪の状況(収入などを含め)」にあっても続けられるよう上記の意味での「事務」を駆使する必要があるということです。
著者はこのことをより深く理解させるために、好きなものをいつまでも楽しくやることを続けられることが「才能」であり、それが作品になって、売れて、食えるようになることは「評価」だという考え方を提示しています。
例えば、ゴッホには生存中は好きなこと(絵画)ができる「才能」がありましたが、「評価」に恵まれず、幸せな人生を送ることはできずに、自らその人生を閉じてしまいました。そして、皮肉なことに「評価」は死んだあとにものすごく大きな形で実現しました。
ということは、彼には「事務」が足りなかったということになるのかもしれません。
もし、生前中の彼に少しだけでも他人の「評価」をコントロールする「事務力」があったのなら、自らの人生を閉じることなく、最後まで「好きなことを思うままやって生きていく」ことを継続できたはずです。
ちなみに、それを見事に実現したのがピカソです。
ウィキペディアでピカソを調べましたら、彼の語録が紹介されており、まさにこれこそが本書が伝えたい「事務」の力を表現していると思いましたので以下に掲載しておきます。
「労働者が仕事をするように、芸術家も仕事をするべきだ」
「誰でも子供のときは芸術家であるが、問題は大人になっても芸術家でいられるかどうかである」
「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ」