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重要なのはsympathy(同情)ではなくempathy(共感)

2024年10月12日 CATEGORY - 代表ブログ

書籍紹介ブログでご紹介した鳥飼玖美子先生の「異文化コミュニケーション学」から最も印象深かった項目を取り出して書いてみたいと思います。

それは、「異文化能力」についての解説項目でした。

異文化能力とは、一生を通じて発達する生涯学習であり、言語能力は必要だが、それだけでは異文化能力につながらないこと、複雑かつ広範な能力なので、教育に当たってはいくつかの要素に分けて考える必要のある能力のことです。具体的には、異文化との接触や交流において適切な行動をとる上で重要な要素として、「異なる価値観を尊重する」「決めつけず心を開く」「好奇心」などの態度が挙げられ、特に「他者理解」の視点で自分の文化を相対化することができる能力です。

そして、この「他者理解」にあたって重要な概念として着目すべきこととして、empathy:共感(感情移入)が挙げられています。

似たようなものとして、sympathy:同情がありますが、この「同情」と「共感」には次のような点で大きな違いがあります。

「同情」は憐みの感情であり、そこには明らかな上下関係が存在するのに対し、「共感」は同等の関係性を保ちつつ「感情移入」し、相手の気持ちになることです。

このことを本書では、2010年の韓国ドラマ「Secret Garden」の内容を利用しながら解説しています。

(*本書にはこれ以外にも韓国の連続ドラマがものすごくたくさん取り上げられており、鳥飼先生はよほどの韓流ファンだと思われますが、一応「日常的なコミュニケーション行為がいわば凝縮されているのが映像作品であり、特に連続ドラマは十回以上続くので、描写が丹念であり、生のコミュニケーションを学ぶのに最適である。」という言い訳?をされています 笑)

ただ、ここで本書に書かれている詳細を説明してしまうと、同じように二重の意味でネタバレになってしまいますのでそれは控えますが、本当にざっくりとその内容を書こうとすれば以下のような感じです。

身分、学歴、財力、権力と生まれつき全てにおいて恵まれた財閥御曹司と、両親を亡くして大学には進めず、まともな職歴はないながらも本質を見抜く力があり、現在のスタント女優という仕事に誇りを持ち、権力に屈しない強さのある女性が、魔法によって魂が入れ替わってしまうという荒唐無稽なストーリー。

二人がそれぞれの住まいや職場など両極端の環境に身を置き、自分とは全く異なる世界を知ることで、立場の異なる相手の身になる「感情移入」をせざるを得なくなるという仕組みです。

この本書での解説文に私は非常に触発されまして、このドラマを見はじめたら止まらなくなり、結局1話1時間全20話全て見てしまいました。(笑)

基本的には、この「感情移入」はこのような荒唐無稽な環境がなければ体験することが不可能であり、そのそもこの「共感」という感情は、私たち人類は獲得することは絶望的に困難なものだと思います。

逆に言えば、もし人類が今後の進化の過程でこの「共感」の感情を獲得できるようになるとすれば、その時こそが、この世界から戦争がなくなるときなのかもしれません。

その意味で言えば、本書のように「異文化コミュニケーション」を啓蒙する書籍が出版されたり、「Secret Garden」のような「共感」を疑似体験させるような映画が創り出されることも、多少なりともその進化の後押しをするようなものになるのかもしれません。

というスケールの大きなことを言う前に、身近なこととして、夫婦間の「共感」に意識的にチャレンジしてみろと言われそうですが、、、

 

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