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経験なき経済危機

2020年11月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

「2020年コロナ危機は、世界銀行の報告書によると第一次世界大戦、第二次世界大戦、大恐慌に次ぐ、歴史上で四番目に深刻だと評価される、しかも、これは欧米人の評価だから日本から見ると、第二次大戦に次ぐ歴史上二番目の危機ということになるだろう。」

こんな言葉から始まる「経験なき経済危機」という本をご紹介します。

本書は、かつて大ヒットした「超●●法シリーズ」の著者である野口悠紀雄一橋大学名誉教授の最新刊です。

現在進行形のコロナ禍における「経済」「政治」そして私たちの「生活」に関わる最新情報とそれに対する「評価」を行っています。

先日ご紹介した「逆タイムマシン経営論」で取り上げたように、「潮が上がった時(時間が経てば)に誰が裸で泳いでいたか」がはっきりするわけで、現在進行形で問題が生じている時に「評価」することは非常に恐ろしいことですが、この恐怖に怖じずにその仕事をされている著者に敬意を表しながら、非常に興味深く読ませていただきました。

その中で、私が印象的だったのが、コロナ禍における「国や自治体の自粛要請のあり方」についての「評価」でした。

以下にその部分を引用します。

「国による緊急事態宣言がなされて収入の道を断たれる人たちが増えた。これについて、『営業自粛要請と補償はセットだ』という考え方が主張されている。他方で政府は『自粛要請による損失補償はしない』と一貫して明言している。これは原理原則の対立だが、この中間が解であることは間違いない。問題は『誰にどれだけ』ということなのだ。」

この指摘については、私は全面的に野口教授の言うとおりだと思いました。

そして、この部分について「自粛要請による損失補償はしない」というバランスを欠いた方針を貫く政府関係者だけではなく、この「自粛要請による損失補償はしない」という政策下にも関わらず、強硬に経済活動を制限させようとする多くの「(少なくとも今のところは)コロナによって所得に影響を受けない人々」にも、この教授の指摘に耳を傾けてほしいと思います。

なぜなら、これは「当事者意識」の問題だと思うからです。

緊急事態宣言の最中に休業を余儀なくされた事業者たちは、本当に「死ぬか生きるか」の状況に置かれたはずです。

というのも、彼らは自粛したいのはやまやまなのに、国からの補償は得られないがために命を懸けて営業をしなければならない上に、「(少なくとも今のところは)コロナによって所得に影響を受けない人々」から「犯罪者」に近い扱いを受け、どうしようもなく大変な苦境に追い込まれました。

もし、「(少なくとも今のところは)コロナによって所得に影響を受けない人々」が、同じような状況になったら、確実に自分の生活を優先するのは明らかなのにです。

ですが、人間は実際に自分がそうなってみないと実感できないのが本性であり、今苦しんでいる人も立場が逆になれば、同じように「当事者意識」を持てずに、平気で自分が安全な立場から攻撃をしてしまうことは十分にあり得るのです。

だから、これは「当事者意識」の問題なのです。

このように、かつて自分や身近な人がそのような状況に追い込まれた経験をしたなどのケースを除き、なって初めて当事者意識は生じるという厄介なものです。

だからこそ、政府が「当事者意識」をもって政策を展開しなければならないのです。そしてその政策は、野口教授が指摘する「誰にどれだけ」を見極めたものであるべきなのです。

本書で野口教授の明らかにされたデータからは、以下のような「誰にどれだけ」を見極めたとはとても言えないひどい事実を知ることができます。

◆ 勤労者の平均所得の減少は小さい

実際にコロナの影響が所得に影響している業界は宿泊や飲食などに限定されており、平均の勤労者所得としては前年同月比2.1%に過ぎない。

◆ 特別定額給付金(全国民に一律10万円)によってむしろ平均貯蓄が増加

にもかかわらず、全国民に対して一律給付したところ、給付金の大部分は貯蓄の増加に回り、あとはエアコンや和服などの購入にあてられた。つまり、「給付金をもらえたのはありがたいがこれがなければ生活できないというわけではなかった」というのが勤労者世帯の平均的な感想だ。

◆ その給付金の支給にかかる財政負担は12.8兆円

2020年4月20日に閣議決定された政府のコロナ対策の実際の財政出動(真水)部分が48.4兆円であり、その26%を占める最も大きな割合がこのような使われ方をした。

このようなデータを見せられてしまうと、「誰にどれだけ」という視点が大きく抜け落ちていることが明らかになります。

ただ、こればかりは、過去のことで反省して終わりというわけにはいきません。

政府は是非「当事者意識」をもって「誰にどれだけ」の視点で今現在まさに進行中の危機に対処していただきたいと思います。