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アメリカ大統領選「選挙人団」とは何か

2024年11月8日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2024年11月5日はアメリカの大統領選挙の投票日でしたが、ドナルド・トランプ前大統領とカマラ・ハリス現副大統領の大接戦と予想されていたものが、現時点(2024年11月8日)でトランプ氏の獲得選挙人295人(29州)に対してハリス氏の226人(19州+ワシントンDC)でトランプ氏が予想外の大勝をしました。

私もこの結果自体について驚きをもって受け止めたのですが、今まで何度も見聞きしてきたはずのアメリカ大統領選挙において今回初めてその独特の選挙システムについて疑問を持つことになり、調べてみることにしました。

色々見た中で分かりやすい解説をしていると思ったのがこちらの「読売新聞オンライン」と「About the America」そして「東京新聞WEB」の記事でした。

以下、これら3つの記事からの情報をまとめてみます。

まず、アメリカの大統領選挙は日本の地方公共団体の首長選挙のような総獲得票数で当選者が決まるのではなく、州ごとの「選挙人」の合計で大統領を決める仕組みである「選挙人団」というシステムを取っています。

これは、各州ごとの選挙で勝った候補者がその州に割り振られた選挙人数を総取りし、それぞれの州がその選挙人団を中央に送りこみ、彼らの投票によって最終的に大統領を決定するというものです。

ですから、各州で圧倒的に一方の候補が勝った場合、接戦であった場合に関わらず、とにかく勝ったほうがその州に割り振られた全選挙人を獲得することになるので、全国における総投票数で勝った候補が敗北するという可能性もあるということになります。

各州の選挙人の数は、州人口の国勢調査に基づいて決められている州選出の下院議員と、上院議員(上院議員はどの州も2人)の数の合計に等しく、ワシントンDCは州ではないため連邦議会における投票権はありませんが、選挙人票としては3票を持ちます。

すなわち、最も下院議員数が多いカリフォルニア州に割り振られている選挙人数が54人、最も少ないアラスカ州とバーモント州が3人など全米総数は538人となり、大統領に選ばれるために必要な選挙人票は270となります。

では、いったいどのような人が「選挙人」になるのでしょうか。

一般的には、事前にそれぞれの州の党大会や州の党中央委員会などで指名されることになりますが、州知事が指名するケースもあり、いずれにしても多くは党の功労者や支持団体の代表者らが就任する名誉職的なものです。ただし、合衆国憲法の規定で、上下両院の議員や、政府から報酬を受けて公職に就く人は、選挙人になれないようです。

ということは、それぞれの選挙人は政党的に中立であるとは限らないということです。

ですが、一般有権者による11月の投票で共和党が勝った州の選挙人は民主党関連を含め全員が共和党候補に、逆に民主党が勝った州の選挙人は全員が民主党候補に投票することが原則とされています。

ただ、それはあくまでも「原則」であって、選挙人が大統領候補に投票する段階で、党の候補以外の人物に投票する「不誠実な選挙人(faithless electors)」の存在もあり得ます。実際に、トランプ氏とヒラリー・クリントン氏が争った2016年の大統領選では、ヒラリー候補の夫であるビル・クリントン元大統領がニューヨーク州の選挙人になっており、彼を含む7人が「不誠実な選挙人」となりました。ただし、いまだかつて不誠実な選挙人が当落を左右したことはないようです。

とはいえ、なぜこのような非合理的ともいえるような仕組みが存在しているのでしょうか。

それは、アメリカ建国当初、国民の識字率は低く、有権者が政治について知る機会も限られていたため直接投票による大統領の選出に懐疑的な政治家が多かったことに由来するようです。
 
直接選挙というダイナミックな大統領選で有名なアメリカですが、その点は日本やイギリスの「議院内閣制」の趣旨に近いような気がします。
 
その意味でいえば、「ねじれ」を引き起こす可能性のある「選挙人団」の趣旨が時代遅れになっているという指摘もうなずけるというものですし、それ以外にもこの仕組みの弊害が指摘されています。
 
例えば、最近では多くの州で、民主、共和どちらが優勢か投票前にはっきりしていて、候補者が接戦が予想される一部の激戦州に資金や時間を集中的に投下することも問題視され、また候補者が選挙運動でほとんど訪れない州も相次ぎ、ピュー・リサーチ・センターの調査によると、選挙人の数ではなく、一般投票の総得票数で勝敗を決めるべきだとの回答は65%に上っています。
 
ちなみに、今回の選挙で「激戦州」と呼ばれたのはペンシルベニア州(選挙人数19)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)、ノースカロライナ(16)、ジョージア(16)、ネバダ(6)、アリゾナ(11)の計7州でした。
 
2024年11月8日現在、トランプ氏は、これら激戦州の中でペンシルベニア州(19)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)、ノースカロライナ(16)、ジョージア(16)で勝利を確実にして、未だ開票途中のネバダ(6)、アリゾナ(11)でも優勢で7州すべてで勝利する勢いのようです。(2024年11月9日、これら7州すべてでトランプ氏勝利が確定しました。)
 
今回のアメリカ大統領選挙については、トランプ氏が予想外の大勝をしたことでこの「選挙人団」のシステムによる問題はそれほど表面化しないとは思われますが、これらの記事の解説を受け止める限り、アメリカには直接選挙というダイナミックな大統領選が似合うと思います。

 

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