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韓国で一体何が起こっているのか

2024年12月8日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2024年12月3日夜、韓国のユン大統領が「戒厳令」を出したものの、国会の反対を受けわずか6時間で解除し、その後、野党から大統領の弾劾案が提出されたものの12月7日に議会で否決されるという混乱状態に陥っているということですが、テレビを見てもこの問題の根本がどこにあるのかを含め、私たち外国人が理解できるような報道をほとんど見つけることができません。

そんな時に重宝するのが、NEWSPICKSの記事とそれに対するプロピッカーたちのコメントです。

以下、こちらの疑問点に対するニュースピックス記事の回答にあたる部分を要約引用します。(一部加筆修正)

まずは、そもそも韓国における「戒厳令」と何かについて。

「戦争や甚大な自然災害といった非常事態に、公共の秩序を維持するため、行政や司法の一部機能を軍隊に委ねること。戒厳が発動されれば、政治活動のみならず言論や集会の自由なども厳しく制限される。韓国以外の国では、日本では現行憲法で戒厳令に関する規定はないものの、世界的に戒厳は珍しくない制度だ。天安門事件当時の中国でも出されているほか、米国では州単位で戒厳令を宣言することが可能だ。今回の舞台となった韓国での戒厳令は、下記の憲法第77条第3項で定められている。『非常戒厳が宣布されたときには法律が定めるところにより、令状制度、言論・出版・結社の自由、政府や法院の権限に関して特別な措置を行うことができる』と。韓国の戒厳には、『非常戒厳』と『警備戒厳』の2種類がある中で、ユン氏は今回、軍による統制がより強い『非常戒厳』を発動した。(ちなみに前回の発令は1980年チョン・ドゥファン大統領が宣言して軍政に抗議した市民が多数犠牲となった光州事件で、87年に韓国が民主化してからは今回が初めて)」

では、ユン大統領はなぜこのような強権的で時代錯誤的な決断を下さざるを得なくなったのか、神戸大学大学院の木村幹教授の指摘が分かりやすかったので引用します。

「韓国では、4月に実施された総選挙で与党が大敗したこともあり、国会では野党が主導権を握っている状態だ。そのため、政府が提出した予算案や法案が否決されたり、野党が提出した法案に対し大統領が拒否権を行使したりするなど、政界で混乱が続いてきた。戒厳令の背景には、こうした事態を打開したい狙いがある。とはいえ、与野党の対立で軍隊を出す事態にまで発展する必要があるのか、と誰もが思うだろう。実は、ユン大統領は、自分の足を引っ張る野党などの背後には北朝鮮がいて、そうした勢力を排除しないと国が滅ぶのだと、本当に信じていた節がある。そもそもユン氏は、味方であるはずの与党とも距離があり、戒厳令についても事前に伝えず、必死に止める閣僚もいなかった。2022年の大統領就任以降、30%台で推移していた支持率は、選挙で大敗した4月以降も20%台に落ちていた。また、妻・キム・ゴンヒ氏の選挙介入や株価操作といったスキャンダル疑惑もあり、与党からも距離を置かれていた。こうした大統領を取り巻く環境だけでなく、そもそも韓国政界のルールも影響している。というのも、韓国では戒厳令を宣言するのには明確な要件が存在しない。戦争や大規模災害といった大混乱を前提にしているものの、一方で『発令してはいけない』という基準はない。さらに、大統領が戒厳発令を閣議に諮る必要はあっても『全会一致』や『賛成多数』など、成立要件まで規定されていない。ユン大統領は、自身の支持率が低迷する中で孤立した環境に置かれた結果、最後の手段として(実際には宣言しようと思えば簡単にできてしまう)戒厳令に手を出してしまったということだ。」

その後、冒頭で述べた通り、12月7日にギリギリのところで弾劾案は否決されましたが、野党が12月11にも再提出する構えを示したばかりか、弾劾を阻止した与党「国民の力」のハン代表も「混乱を最小化するためユン大統領の秩序ある退陣を推進する」と表明するなど、大統領はどちらにしても八方塞りの状況に追い込まれてしまっています。

最後に、プロピッカーとしてコメントを寄せたフリージャーナリスト村上和巳氏の文章を引用します。

「検察官時代のユン大統領の経歴からすると、民主化した今の韓国でありえない強硬策に出るのは意外にも映りましたが、記事内の木村教授のコメントを読んで何となく納得しています。そのコメントは『自分の足を引っ張る野党などの背後には北朝鮮がいて、そうした勢力を排除しないと国が滅ぶのだと、本当に信じていたと思います。』というもの。法学生・検察官時代のユン大統領の行動は、一見すると公正で真面目な正義感が源とも映りますが、木村教授のコメントから『自分が正義と信じたものを直情的に実行に移す人物』と解釈すれば、検察官時代の行動と今回の戒厳令を出す行動も同じユン大統領の行動として説明できるように思います。」

つまりは、ユン大統領はあまりに自分自身にとって不利な状況に陥ったことによって、「キレて」しまい、このような行動に出ざるを得なくなってしまったというのが最も単純化した説明になるでしょうか。

日本との関係においては将来を見据えた冷静で計算高い大統領だと見られていただけに非常に残念な気がしますが、今後も韓国の状況には注視していきたいと思います。