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お金ほど無価値なものはない?

2016年12月7日 CATEGORY - 代表ブログ

カネ程無価値なものはない

皆さん、こんにちは。

ものごとの本質を伝えるのが本当に上手な一橋大学の楠木先生についてはこのブログで何度も取り上げてきておりますが、その楠木教授が「人に物事を教える天才」だとしてご紹介されているのがファイナンスの専門家にしてプルータスコンサルティングの創業経営者、野口真人さんです。

そして、野口氏の新刊「あれかこれか」について、「彼の多くの著作の中でもこれはとりわけ素晴らしい」と絶賛されていましたので読んでみました。

本書は、「ファイナンス理論」という経営学の中でも最も難解だと思われている分野についての入門知識を提供してくれているものですが、私自身、経営学を学んできて、実際に会社の経営を行っているという立場でありながら、非常にお金の「本質」について再認識をさせられる印象的なものでした。

本書におけるファイナンスという学問の目的の定義は、「お金の本当の価値(の低さ)に気づき、現金主義という人生最大の呪縛から人々を自由にする学問」です。

人間はどうしても価格(カネ)という目に見えるものに惑わされがちですが、著者は、本当の意思決定は、「価格(カネ)と価格(カネ)」とを比較することでなすのではなく、価格(カネ)と価値(使用価値)とを比べることでなされるべきだとファイナンスの理論に基づいて主張します。

その例として、リーマンショック後の投資の神様ウォーレンバフェットの行動をあげています。

「2008年のリーマンショック直後、世界中のほぼすべての株価が下落し、恐れをなした投資家たちは慌てて手元の株式を売り払った。そんな中、ウォーレンバフェットはただ一人、ゴールドマンサックスが発行した優先株式と新株予約権を一手に引き受けた。その後、ゴールドマンサックスの株価は回復し、彼は巨額の利益を手にすることとなった。」

自分以外の皆が、人間の性として「価格(カネ)という目に見えるものに惑わされて」いる間に、自分だけは価値(使用価値)に目をやることができれば、彼のようなことが可能となるのです。(ただ、このことは、理論としては分かるのですが、あのような雰囲気の中でそれを実行するということは、実際には非常に難しいからこそ、彼の行動が際立つわけですが)

つまり、価格(カネ)は、それ自体ほとんど価値を生み出しません。最近ではゼロ金利も手伝って、そのことはより明確になってきました。価値、すなわち利益を生み出すのは、そのカネを、カネ以外のものに変えて、その価値(使用価値)を引き出すことによってのみ可能となります。

ですから、お金自体は「無価値」、もっと言えば、価値の尺度に過ぎないと考えられます。

しかも、モノの価値というものは人や状況によって大きく異なるため、それは価値の一面からの尺度にすぎません。

だからこそ、以前の記事でご紹介したソフトバンクの孫社長の「わらしべ戦略」などというものが実行可能なわけで、やはり洋の東西を問わず、このファイナンス理論をきちんと理解している人は本当に強いなと思いました。

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