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シンポジウム「どこへいく日本の英語教育」報告 その1

2018年10月30日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日、書籍紹介でおなじみの東京大学の阿部先生と英語教育の4人の侍の一人である和歌山大学の江利川先生、そして東京都立高の上位校二校の英語の先生による早稲田大学で開催されたシンポジウムシンポジウム「どこへいく日本の英語教育」に参加させていただく機会がありました。

阿部先生の著作はこちら

江利川先生の著作はこちら

シンポジウムのメイントピックはもちろん、2020年に行われる大学入試改革に伴う一連の英語教育改革です。

阿部先生と江利川先生のお二人がメインスピーカーをつとめられるわけですからその論調は予想できましたが、今回初めてお二人の生のお話を聞くことができ、彼らのこの一連の改革に対する絶対反対の姿勢にさすがの私も圧倒される場面が何度もありました。

お二人とも、著書の中での主張にも増して「小学校英語」も高校における「英語で英語授業」も完全に否定されており、特に江利川先生に至っては、スピーチの最後を

「i(愛)のないeigo(英語)は単なるego(エゴ)である。」

と締めくくられていて、先生の英語教育に対する責任感の強さを感じさせられました。(笑)

加えて、今回のシンポジウムはお二人の高等学校の先生(都立新宿高校の笠原先生と都立西高校の福田先生)も参加されており、彼らから実際にこの英語教育変革の現場でどのような対応をされているのかを聞くことができました。

彼らは、都立高校の教師であり、当然ですが現場の教育の進め方を勝手に決めることはできません。

ですが、彼らも英語教育のプロですから、この改革によってどれほどの悪影響が生徒に及ぶのかについて十分理解されており、大きな「不安」を抱えながら教育にあたられています。

そして、その状況の中で可能な限り「マシ」な授業を組み立てるにはどうすればよいかについて非常に苦心されていることが分かりました。

実際に、西高校の福田先生がご紹介くださった「CLIL(内容言語統合学習)」の実例からは、その一端を垣間見ることができました。

CLILは、「学習する内容と言語を統合的に学ぶ機会を学習者に与え、思考力を高めることを目的とした学習方法」です。

例えば、地球温暖化対策について、搾取労働について、人工知能についてなど、社会的なテーマに対するディスカッションやディベートを通じて内容と言語の両方の学習を図ります。

そのため、週何時間という限られた時間で取り組めるような内容ではなく、よほど能力の高い生徒でなければ、「英語を学ぶ」のか「英語で学ぶ」を明確にできず、中途半端で終わってしまうものです。

実際に、これを行っている西高校の福田先生も課題に生徒間のレベルや意欲の差に伴う困難さをあげられていました。

しかも、福田先生の勤務校が西高校という都立のトップ校であり、在籍する生徒のレベルは平均をはるかに超えるということも考えなければなりません。

上位校でさえ、このような課題を認識している状況なのにもかかわらず、この改革を全体的に進めることは非常に大きな問題であることをあたらめて感じさせられるとともに、それでも現場で不安と戦いながら何とか意味のあるものを作り上げようとする先生の存在を知ることのできた意義深いシンポジウムでした。

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