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アメリカの会社の引継ぎ

2019年2月25日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

日本の会社とは異なり、完全成果主義に基づくアメリカの会社では突然クビを言い渡されるというようなことを映画などで見ることがありますが、本当のところはどうなのだろうかと思う日本人は多いと思います。

私も、実際アメリカの会社で働いたことも、実際にクビになったこともありませんので、あくまでもそのような漠然としたイメージしかありませんでしたが、先日その問いに答えているサイトを見つけました。

それは、QUORAというQ&Aサイトです。

これは、ウィキペディアによると、「2009年6月に会社を設立されたユーザーコミュニティで作成、編集、運営を行うQ&Aサイトである。質問と回答の収集を行なっており、ユーザーは質問の編集や他ユーザーによる回答に編集を提案することで協働作業が可能になっている」というようなものらしいです。

今回、このサイトの質問の欄に、「アメリカでは仕事をいきなりクビになることがあると聞きますが、そのクビになった人がもっていた仕事はきちんと他の人に引き継がれるのでしょうか?」とまあ、ドンピシャな質問がなされていました。

この回答者はあるカリフォルニア州のハイテク産業で長年働いた経験のある日本人の方ですが、少なくともカリフォルニア州内のハイテク業界において「引き継ぎ」は有り得ないと断言し、その理由を以下のように二つあげられています。

「一つ目の理由は、『引き継ぎはすべきではない。引き継ぎをするような企業は古びて市場競争に破れ、破綻する』というアメリカ独特の企業経営哲学が、過去300年の間に発展、強化され、どの業種でも全米に広く滲み込んでいるからです。アメリカでは、どの業種でも、新任の社員、特に新任の管理職者は『前任者になかった新方針、新手法、新企画』を面接試験で提案し、その内容や提案の力強い発表態度が評価されて採用されるのです。当然のこととして、新しい提案をほんとうに実践することが大いに期待されるので、前任者の仕事の仕方は、アメリカではむしろ『絶対に引き継ぐべきではない』と思われているのです。なにも引き継がず、これまでになかった新風を吹き込まなければ、手腕を評価されず、遠からずしてクビが危うくなるのです。」

この回答を読んで、私は冗談ではなく、頭をハンマーで殴られたほどの衝撃を受けました。「引継ぎをしない」なんてありえない!と思っていたのが、実は「引継ぎをしない」方がよほど「本質的」だったということに気づかされたからです。

こういうところが、日本人は改良は得意だけども世の中にないものを作り出すことについてはアメリカ人に絶対にかなわない理由だということが分かります。

前任者のやってきたことを当たり前のように「引き継ぐ」ことが正解だと思っている社会と、前任者と同じことをやっていたのなら、自分自身の存在価値はないから「新しいことを考える」ことを正解だと思っている社会とでは、その社会が生み出すものの性質は大きく変わってくるのは当然でしょう。

そして、

「二つ目の理由は、カリフォルニア州のハイテク業界では『いきなりクビになる』のは、どの会社でもどの地位でもまったく日常茶飯事ですし、そうすることが合法なので、誰かが突然解雇されたとき後任者がまだ採用されていないために、『引き継ぎ』の期間を設けることができないからです。また、解雇通告から物理的な退去までの時間が昔に比べて短くなった理由のひとつには、復讐の実行をできるだけ難しくするという目的があります。突然解雇されるプログラマーの中には、人知れずハッキング能力が高く、強い復讐心を秘めた人がいます。下手に、解雇通告後たとえ4時間でも会社に残れる時間を与えると、何千人もの社員が利用しているサーバー上の貴重なデータを、削除するのではなく、(高等なプログラムを使って、被害の発見に時間がかかるよう) 巧妙に改竄してから去る人がいるからです。まして、解雇が決まった社員に引き継ぎを頼むなどもってのほかで、(場合によっては) 非常に危険なことになるのです。」

こちらについては、ハイテク業界だからこその理由だと思うのですが、一つ目の理由と比べると、かなり社会的に「非合理的」なものだと思います。

日本社会にどっぷりつかって育った私としては、前者の理由に「合理性」を感じることはできても、後者の理由には明らかに「非合理」を感じてしまい、自分自身としては、アメリカの企業社会で生きていきたいという気持ちにはどうしてもなれませんでした。

ただし、前者の理由に「合理性」を感じ、むしろこれこそが「本質的」であるとまで理解できているわけですから、日本の「引継ぎ」とアメリカの「創造的破壊」を巧くバランスしながら、後者のような発想をしないですむ、日本的方法を考え出せないものかを考えたいと強く思いました。