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アメリカの無反省について

2022年8月3日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ただでさえウクライナ戦争が長期化する暗澹たる世界情勢にまた大きな不安要因が作り出されてしまいました。

それは、昨日(2022年8月2日)の夜にアメリカのナンシー・ペロシ下院議長を乗せた飛行機が台湾後に着陸したという事実です。

この問題のはじまりは、先週にさかのぼりますが、彼女の日本を含む東アジア歴訪の途中で台湾訪問の可能性を欧米メディアが報じてから、米中首脳会談で習近平国家主席がバイデン大統領に「火遊びすれば身を焦がす」という強い言辞で警告を発していました。

それによって米政府内にも慎重論が広がったにもかかわらず、彼女が強行したことで完全に中国のメンツを正面から潰してしまうことになってしまいました。

この問題の大きさを解説する記事を見つけましたので以下に要約します。

「この問題に対して中国が激怒する理由は大きく二つある。一つはペロシ氏のバックグラウンドだ。彼女は、かつて北京を訪問し、天安門事件の犠牲者への哀悼を示すという騒動を起こしたり、香港問題では、民主派の若手リーダーだったジョシュア・ウォンらを米議会の公聴会に出席させ、『香港人権民主主義法』の可決にも尽力したり、ノーベル平和賞を受賞したチベットの精神的指導者ダライ・ラマとも交流がある米議会のなかのリベラル・人権派である。しかも、日本では議会の議長は名誉職的な存在だが、米国下院議会議長は、大統領不在のときに副大統領の次に職務を代替できる立場にあるため中国から『米政府第三位の権力者』と認定されている人物である。そしてもう一つの理由は、このことが、米中首脳会談での直前の警告を無視して行われたということだ。愛国主義化が著しい中国世論はペロシ議長の訪問には強い不満と関心を示しているため、中国政府が何らかの形でアメリカと台湾に一定の制裁を加えない限り、不満がブーメランのように中国指導部に向けられることになり、秋の共産党大会で三選を控えた習近平主席は、このことを決して軽く扱うことができない事情があることだ。」

つまり、中国はアメリカはこの中国の事情を十分に分かった上で「確信犯的行動」をとったということに怒りのポイントを置いているということが分かります。

私は、このブログ記事に「アメリカの無反省」というかなり厳しいタイトルを付けました。

というのも、今までイラクやアフガニスタンなどアメリカが自らの都合でその地に関与し、その後の都合で手のひら返しをしてその地の混乱を引き起こしたことは記憶に新しいですが、この中台問題もその例外ではなく、アメリカ自身がきっかけを作ったという事実を忘れているのか、それとも完全無視を決め込んでいるのかのいずれかとしか思えないからです。

以下、中国と台湾の国際承認の歴史をウィキペディアの内容から抜粋します。

「そもそも、太平洋戦争終結後、1946年6月から本格化した国共内戦ではアメリカからの支援が打ち切られたことなどが災いして、ソ連が支援する中国共産党に対して中華民国が劣勢に陥り、1949年中国共産党が中華人民共和国を樹立し、中華民国は首都を中国共産党に実効支配された南京から、臨時首都として台湾の台北に移転したことにより台湾の歴史が始まる。そのため、国家としては当初国際的に認められ、国連に加盟するのも中華民国(台湾)だった。その後、冷戦下の1971年に中ソ対立が起こったことで、アメリカをはじめとする西側とソ連をはじめとする東側との間での政治的駆け引きが行われた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国は国連とその関連機関から脱退せざるを得なくなる。そして、1972年にアメリカのニクソン大統領が秘密裏に北京を訪問し、日本などの同意なしに中華人民共和国を承認する意向を見せると、アメリカの影響下にある多数の西側国家がこれに同調し、日本も中華人民共和国を承認して中華民国と断交。その後、1979年にアメリカのカーター大統領が最終的に中華人民共和国を『中国の代表権を有する正統政府』として承認した。」

このアメリカのちゃぶ台返しは、ベトナム戦争の長期化に悩むアメリカが、インドシナ情勢に強い影響力を持つ中国との関係を築くことによって、事態の解決を有利にしようとしたものだと言われています。

中華人民共和国を承認し、国際舞台に引き出すことでベトナム戦争を有利に展開しようとしたのでしょうが、突如として関係を断たれ、国際連合から追放された中華民国(台湾)の当時の国民に思いをはせるとなんとも言いようのない嫌な気持ちになります。

このアメリカの台湾に対する仕打ちは、今に至る中東地域の混乱が当時の英国のユダヤとパレスチナの両者に対する「二枚舌外交」によるものであるという事実とともに国際政治の歴史に刻まれています。

そして、その事実以上に問題なのは、アメリカもイギリスもそのことに対して責任を感じているようには見えないことです。

もちろん、今回のことをもって中国の台湾に対する姿勢を肯定するつもりは毛頭ありませんが、上記の歴史をふまえれば、少なくともアメリカはこのような歴史を作り出した張本人であるわけで、この期に及んでこのような混乱を助長するような行動を簡単にとってしまうことについては違和感しか感じられません。

 

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