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インターネットの崩壊

2016年10月5日 CATEGORY - 代表ブログ

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皆さん、こんにちは。

2016年9月25日の読売新聞の朝刊にインターネットに関する興味深い視点から書かれたコラムがありましたのでご紹介します。このコラムは、先日「シン・ゴジラ」についての面白い内容をご紹介したあの「地球を読む」というコラムです。

それは、アメリカの国防次官補をつとめられたことのある元ハーバード大学の政治大学院の学長ジョセフ・ナイ教授による「インターネットの崩壊の可能性について」というにわかには信じがたいトピックでした。

2016年現在インターネットが世界全体のGDPにもたらす経済的貢献は4兆2000億ドルに達し、今後もIOT(あらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)の発展によってその規模は大きくなる一方です。

ですから、このタイミングで「インターネットの崩壊の可能性」などといったテーマが読売新聞の1面のコラムで堂々と議論されるなど、違和感を持たれる人が大多数だと思います。

このコラムでは、インターネットによるマイナス面について、2016年における世界全体のサイバー被害額が4450億ドルであり、こちらも急速に増大していく恐れがあるとの見方も示しています。

それでも、インターネットの世界経済に対するマイナスはプラスの1%にしか過ぎないわけで、この数字だけを見ればそこまで心配する程のことではな異様にも思えます。

しかし、一方で実際にIOTが発展すればするほど、サイバー攻撃による被害の規模は、まだ多くのモノがインターネットにつながっていない現時点では想像を絶するような大きな経済的なインパクトを秘めていると考える必要があるとする著者の指摘は無視できないと思いました。

つまり、IOTが実現されていない現時点では、インターネットはあくまでも現実世界との「連結部分」を担っているに過ぎないともいえるわけです。

連結部分を担っているだけの現時点でも、単なる個人によるハッキングにとどまらず企業や政府による個人情報や送電線網を攻撃するといったようなインフラへのサイバー攻撃などで、各国政府は神経をとがらせています。

今後、IOTが進むと、インターネットは現実世界そのものとなっていきます。自動運転に始まり、ありとあらゆるモノのコントロールをインターネットを通じたAIなどに任せる判断をするところまで到達した段階でそのような攻撃がなされれば、あらゆるモノが武器化することになります。

そのような段階でのシナリオは何か。

それが、「分断」である可能性を著者は示しています。

実際に、国家のインターネット規制の動きは強まっており、ある程度の「分断」はすでに始まっています。中国の当局による検閲システム「グレートファイヤーウォール」は有名ですが、他の多くの政府も政治統治を脅かすと思われるネット上の動きを検閲しています。

これらの動きが加速して行った先には、人々がインターネットへの信頼を失い、次第に使用を減らしていく可能性があります。インターネットの価値が、「ネットワーク」そのものにその本質があることを考えると、このような可能性が根本的な課題を投げかけているのは間違いありません。

中国は特別でしょうという考えもあるのかもしれませんが、英国のEU離脱の問題など、昨今の世界情勢はグローバル化の進展という世界の潮流とは別個の面を見せることも目立ってきました。

そんな中、「インターネットの統治に関するグローバル委員会」は、インターネットの円滑な存在継続に必要な条件を以下の通りあげています。

①インターネットの基準は公開で発展させる。

②すべてのユーザーがネット環境の「衛生状況」改善に努め、ハッカーを排除する。

③安全性と強靭性をシステム設計の中核に据える。

④政府は第三者に暗号開示を義務付けない。

⑤インターネットの中核的基盤は攻撃しないと各国が合意する。

以上の条件を見てみると、そのほとんどが「インターネットに関係する者すべてが相互に信頼する」ことを前提にしたものです。

逆を言えば、自国の利益第一主義によって、世界の潮流が形作られていくようなことになれば、インターネットの円滑な存在継続はあり得ないということになります。

「すべてが相互に信頼する」ことによってはじめて継続性が認められる、これは核兵器の問題と全く同じ構図であるということに気が付きます。

奇しくも、2016年は英国のEU離脱、北朝鮮の核実験の強行など、まさに世界の継続を人類の知恵で可能にし続けられるかどうかが、テストされる問題が多発しています。

そして、そのいずれにも問題解決の道筋さえ見えていません。

果たしてこのような状況の中でも、「インターネットの崩壊」を全く可能性のない与太話と笑っていられるでしょうか。

 

 

 

 

 

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