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グラミン銀行

2020年5月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日、このブログでご紹介した「あした死ぬかもよ?」という書籍のあとがきに、ある大学生の人生を変えた一冊として「グラミン銀行」というバングラディシュの貧しい人たちが貧困から立ち上がるための小口の金融システムに関する本の紹介がありました。

その創始者であるムハマド・ユヌス博士はこれによってノーベル平和賞を受賞されるのですが、私もこの本で紹介されるまでもなくその存在自体は知っていました。

しかしながら、その存在自体は知ってはいてもそれ以上の詳細を調べる機会はありませんでしたので、これを機にこの銀行について詳しく知るためいくつかの本やネット記事をあたりました。

その中から、この仕組みについて非常にシンプルにまとめられた「進化するグラミン銀行」という一冊のブックレットをご紹介したいと思います。

グラミン銀行の仕組みは「ソーシャルビジネス」と呼ばれ、社会に顕在する社会的課題に対して、ビジネスの手法を用いながらその解決に取り組み事業と定義されます。

そして、その解決すべき社会的課題とは、バングラディッシュにおける土地を持たない貧困層の特に女性が、事業を行う意思があっても担保がないため、「融資」を受けられないことからその状況から抜け出そうとしても抜け出せず、貧困が継続するというものです。

当然、彼女たちには担保がないわけですから、そこに何かしらの「仕組」がなければ、「貸し倒れ」のリスクが高く、ビジネスとしては成立できません。

ユヌス博士は、この社会的課題をビジネスとして回しながら解決できる「仕組」を発明し、実行し、継続することでノーベル平和賞を受賞されました。

今回は、本書からの引用を中心に、借主が物的担保持たないことをカバーするための「仕組」についてまとめてみたいと思います。

まずは、「5人グループ」というのがあります。

「融資を希望する人は同性の5人グループを作ります。グループには一世帯から一人しか入ることができず、ほとんどが隣人同士です。グループ結成後は、グループ長とグループ書記を決め、有料の研修を受け、名前を書くことや後述の『16ケ条の決意』といったグラミン銀行の規則を学びます。口頭試験に全員が合格すれば、正式なメンバーとなる。」

そして、その上に「センター」というものがあります。

「5人グループが12程度集まってセンターを作り、毎週定時に集会が開かれます。センター長がグループ長の中から皆で話し合って決められ、任期は1年で輪番制です。」

これは、まさに江戸時代に日本に存在した「五人組」制度のような「連帯責任」の仕組みとしてスタートしたということです。

自分がコケたら、近所の仲間に迷惑がかかるというプレッシャーを利用するという点で精神的な担保を取るということです。

ですが、現在はこの「連帯責任」を「個別責任」に変更しており、それでも問題なく機能しているようです。

そのセンターの集会で行われる「活動」は次のようなものです。

「集会では、センター長が生活憲章ともいえる『16ケ条の決意』を唱和します。そして、グラミン銀行の行員が毎週の返済金と積立金、そして自発的な貯金があればここで受け取ります。その後、メンバーが自身の経験やそれを通して学んだことを語ったり、地域などの情報を共有します。例えば、行員が『16ケ条の決意』に関する話題を提供して、メンバーが意見を言い合うわけです。」

以下に、「16ケ条の決意」の中から代表的なものをいくつかあげてみます。

「・私たちは、どのような人生を歩んだとしても、グラミン銀行の四つの原則である、規律、団結、勇気、勤勉を守ります。

・私たちは、あばら家には住みません。できるだけ早く改築か新築できるように仕事に励みます。

・私たちは子供を教育します。そして子供が教育費を確実に稼げるようにします。

・私たちは、管井戸の水を飲みます。もしなければ、一旦沸騰させた水かミョウバンで浄化した水を飲みます。

・私たちは、いつでも助け合う準備ができています。誰かが困っていれば、皆で助けます。

・私たちは、どこかのセンターで規律が破られていると分かれば、皆で駆け付け、規律の回復に努めます。」

なるほど。

ユヌス博士が1983年のグラミン銀行創設以来ずっと行ってきたこの「ソーシャルビジネス」の本質はまさに「教育活動」であったということが本書を読むことでよく分かりました。