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サピエンス全史

2021年5月4日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

人類(ホモ・サピエンス)にとっての「記念碑的名著」だと絶賛されていたため、2016年の日本語翻訳版が発売されてすぐに購入したのですが、上下巻セット全559ページの圧力に負け続け、つい最近まで「積読」になっていましたが、遂に読むことができた一冊をご紹介します。

その名も「サピエンス全史」です。

これだけの大著の著者は、こちらも驚くことに私とほとんど変わらない1976年生まれのイスラエル人歴史研究者ユヴァル・ハラリ氏です。

ようやく「積読」を解消できた理由は、前回ご紹介した「世界は贈与でできている」の著者の近内悠太氏のハラリ氏へのリスペクト度合が非常に高く、本書の中での非常に重要な引用がこの「サピエンス全史」からなされていたことです。

やはり読書の醍醐味は、素晴らしい著者との出会いにあり、また素晴らしい著者から素晴らしい著者を紹介してもらえるこの素晴らしさの連鎖にあると再確認しました。

それほど素晴らしい本でした。

今現在この世に存在するヒト科ヒト属の「ヒト」という種は、「ホモ・サピエンス」すなわち私たちしかいません。

そのこともあって、私たちはダーウィンの進化論以来、自分たち(人類)が、他の動物と同じように進化の過程を経てきたことは認めつつも、「ヒト」というカテゴリーとしては、それ以外の何物からも独立した唯一の「属(例えば、ライオンはネコ科ヒョウ属のライオンという種。ちなみに、属の上は科で、ヒト科。これにはヒト属ゴリラ属チンパンジー属などもふくまれる)」であると考えがちです。

実際私は、かつて「ホモ・ネアンデルターレ(ネアンデルタール人)」をはじめとする様々な種類の「原人」が進化の結果、「ホモ・サピエンス」になったと考えていました。

しかし、本書を読み、それが全くの誤解であることが分かりました。

というもの、人類(ヒト)もかつては、ネコ科ヒョウ属の「ライオン」と「ヒョウ」のように、ヒト科ヒト属の「ホモ・サピエンス」と「ホモ・ネアンデルターレ」など複数の種が同時に存在していました。

そして、ある時までは「ホモ・サピエンス」と「ホモ・ネアンデルターレ」の能力には、「ライオン」と「ヒョウ」と同様、どちらかがどちらかをせん滅させてしまうような明確な「差」は存在していなかったようです。

例えば、「ホモ・サピエンス」も他の原人も他の動物にはできなかった「火」の活用が可能でした。

しかし、7万年~3万年前までの間に、「ホモ・サピエンス」と他のホモ属との間に圧倒的な能力の「差」が生じる「認知革命」という出来事が起こったといいます。

その理由は諸説ありますが、有力な説としてはたまたま遺伝子の突然変異が起こりホモ・サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにない形で考えたり、まったく新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることができるようになったからだというものです。

この「認知革命」によって、ホモ・サピエンスは「虚構」すなわち、言葉を使って想像上の現実を生み出すことができるようになったのです。

これによって、物語としての「神話」や「宗教」を作ることで見知らぬ人同士が協力することを可能になりました。そして、その協力関係が積み重なることで信頼につながり、農耕などの複雑な活動を可能にしました。そして、それがまた「国家」や「法律」を作ることに発展していったのです。

そこから先の話は私たちは「歴史」という形で少なからず知っています。

そして、ここで言う「歴史」とは、「認知革命」以後のホモ・サピエンスが作り出した変化と発展のことです。

逆に言えば、それより前のことは、(遺伝子の変化でしか変化と発展が起きないという意味で)「生物学」と呼ばれるべきものだと著者は言います。

このように、一ページ一ページが本当に知的好奇心を満たしてくれる本当に素晴らしい本でした。