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ニュータイプの時代

2021年8月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前に、山口周氏の「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」をご紹介して、MBA的人材の価値が下がってきている一方で、「直感」や「感性」の力をもつ人材の価値が高まってきているとの認識を共有しました。

今回は、同著者がその後に出した「ニュータイプの時代」をご紹介します。

本書では、前著にて明らかにした認識をもう一段階具体的に指し示したともいえ、より鮮明にニュータイプの時代が求める人材についての理解ができるようになっています。

著者はまず、MBA的人材を「問題解決型人材」としてオールドタイプに、「直感」や「感性」の力をもつ人材を「問題発見型人材」としてニュータイプに分類しています。

そして、それぞれは時代が求めるニーズの変化によって「オールド」と「ニュー」に分けざるを得なくなっていると以下のように説きます。

「これまで長いこと私たちの社会では『問題解決型人材』が高く評価されていました。原始以来、私たちの社会は常に多くの『不満』『不安』『不便』と言う『問題』にさいなまれており、これを解決することが大きな富の創出につながったからです。ビジネスは基本的に『問題の発見』と『問題の解消』を組み合わせることによって富を生み出しています。過去の社会において問題がたくさんあったということは、ビジネスの規模を規定するボトルネックは『問題の解消』にあったということです。しかし、このボトルネックの関係は今日では逆転しつつあります。つまり、『問題が希少』で『問題解決能力が過剰』になっているということです。今後のビジネスではボトルネックとなる『問題をいかにして発見して提起するのかが鍵になります。そして、この『問題を見出し、他者に提起する人』こそがニュータイプとして高く評価されるようになるのです。」

しかし、「問題」がなくなっているということは私たちにとって悪くないことであって、敢えて問題を見つけることの意味についてこの主張だけでは理解しにくい部分があるように思います。

その疑問に答えるために著者はそもそも「問題とはなにか」すなわち、問題の定義を明らかにする必要があると言い、その定義を以下のように明らかにしています。

「問題とは望ましい状態と現在の状況が一致していない状況です。望ましい状態と現在の状態に差分があること、これを問題として確定するということです。従って『望ましい状態』が定義できない場合、そもそも問題を明確に定義することもできないということになります。つまり、『ありたい姿』を明確に描くことができない主体には問題を定義することができないということです。」

なるほどと思いました。

「問題発見型人材」の本質的能力というのは、「世界はこうあるべきではないか」「人間はこうあるべきではないか」ということを考える構想力そのものだということです。

だから、問題がなくなりつつある中では、すでに世の中に転がっている「解決方法」を人より多く身に着けている人の価値は低下するのは当り前であり、問題がなくなっているように見える世の中に対して、「いや本当はこうあるべきなんじゃないか」というビジョンを持ち得る人の価値が自ずと高まるわけです。

だからこそ、前著で明らかにされたように「MBA」よりも「アート」だということになるわけです。

このように、山口周氏は出す本すべてに深みがあるというかハズレがないというか、私がこのブログで何度もご紹介している一橋大学の楠木教授のスタンスに共通するものがあるなと思っています。

しかも、彼は「独立研究者」を自称しており、特定の研究機関に在籍せずにこれだけの成果をあげられているという意味で、今後の新著にも大いに期待したいと思います。

 

 

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