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ブルシット・ジョブの謎

2022年1月30日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

「ブルシットジョブ」という下品な言葉を知っていますか?

直訳すると「牛の糞のような仕事」ですが、2018年(日本語版は2020年)にアメリカの人類学者であったデイヴィッド・グレーバー氏によって出版された「ブルシットジョブ―クソどうでもいい仕事の理論」の中で議論され、世界的に話題になったキーワードです。

(ちなみに、彼は2020年9月2日に妻や友人とバケーションでイタリアのベニスに滞在中に「壊死性膵臓炎」という病気で59歳という若さで急死しました。妻によるとコロナウィルス感染の合併症として死に至ったとのこと。日本の記事には詳しい死因等についての言及はありませんでしたので英語版ウィキペデイアから引用しました。)

本書の日本語版発刊時に日本でも話題になり私も興味を持ったのですが、その名前の「下品」さとその割に424ページという分厚さに躊躇してしまい今まで読まずに来てしまいました。

先日、その本の翻訳者の一人である大阪府立大学の酒井隆史教授による「ブルシットジョブの謎~クソどうでもいい仕事はなぜ増えるのか~」という新書本が出ましたので横着な私はこちらのほうを読んでみました。

本書の著者曰く、「翻訳者の一人として、自分なりにかみ砕き、また補助線を引いて、なるべく多くの人が分かるような筋道を描き出してみたいと思います。」とのことだったので、前述の二つの理由から躊躇していた私としてはまさに渡りに船でした。

本書の中で著者は、「ブルシットジョブ」とは何なのか次のような定義をしています。

「BSJとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、被雇用者は、そうでないととりつくろわねばならないと感じているもの」

そして、世の中の仕事全体のうち37%が「BSJ」であり、しかもそのまともな仕事であるの頃の67%のうち、それ自体はまともな仕事であっても「BSJ」のサポートをするような仕事(例えばBSJからの清掃やセキュリティの受託)は「二次的なBSJ」とみなすことができるため、それまで含めた実際の「BSJ」は全体の50%以上となるはずだとしています。

ここで著者が思い出させてくれるのは、あの偉大な経済学者ジョン・メイナード・ケインズが「外した」と言われている経済学上の大予言についてです。

1930年にケインズは、「イギリスやアメリカのような国々では、テクノロジーの進歩によって週15時間労働が達成されるだろう」と予測しましたが、現実の世の中は今そうなってはおらず、あの予言は間違いだと一般的には認識されています。

しかし、上記で説明したように現在の仕事の50%以上が「BSJ」であるとするならば、本質的にはこの予言は「正しい」ものであり、現代社会はその正しさを「ブルシットジョブ」を作り出すことで「外れた」ように見せているだけではないかというものです。

常に自分の仕事がそうならないような仕事への向き合い方をしていたいと思います。

 

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