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ブルーオーシャン・シフト

2019年11月13日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

「ブルーオーシャン」もしくは「ブルーオーシャン戦略」という言葉はここ数年で、経営に関心のある人であれば誰でもその意味を知るような一般的な経営用語になりました。

この言葉が世に出たのは、2005年、フランスの経営大学院であるINSEADの教授であるチャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の共著「ブルーオーシャン戦略」が出版された時です。

一般的な経営学は、「競争戦略」すなわち、同一市場内の同業者に対していかに勝るかを考え抜くことが目的だと考えられているのに対して、彼らは、業界の常識とは異なる視点によって市場そのものを自ら創造することで競争をしないことで利益を享受するための戦略を示しました。

競争戦略が目指すものが、血で血を洗う「レッドオーシャン」であるのに対し、自ら創造した競争相手のいない市場でさわやかに自由を謳歌できるので「ブルーオーシャン」というわけです。

今回ご紹介するのは、2005年の「ブルーオーシャン戦略」出版から約15年を経て出された第二弾「ブルーオーシャン・シフト」です。

前著は、「ブルーオーシャン」の概念自体の紹介と企業が「レッドオーシャン」から「ブルーオーシャン」へ移行することの必要性を喚起するという目的がありました。

その目的は見事に達成され、多くの人がその概念と必要性を理解するようになったことは冒頭でお伝えしました。

しかしながら、その概念と必要性を理解した企業の経営者が、いざ「ブルーオーシャン戦略」を実行しようとしても実際にどうしたらよいか分からないというのが実情だと思います。

本書は、その「実際にどうしたらよいか」の部分を体系的に明らかにして、企業が「ブルーオーシャンシフト」できるように指南することを目的としています。

そのポイントは、経営者の認識に企業の構成員の認識を合わせ、「実際に動いて」もらえるようにすることだと言います。そのため、実際の「ブルーオーシャン・シフト」の事例を豊富に紹介して、どのようにそれを実現するのかを明らかにしています。

私が印象深く感じた一つの例を以下にご紹介します。

「世界中の多くの政府と同様マレーシア政府は2010年に刑務所の運営に関するコストと効果についての課題に直面した。刑務所は深刻な過密状態にあり、再犯率は非常に高い水準で推移している。世界の大抵の政府は、刑務所不足にありふれた方法で対処してきた。刑務所を増やしたり、量刑の軽い受刑者と極悪範を雑居させて施設を最大限に活用したりすることだ。しかし、どちらもあまり効果的ではない。なぜなら、刑務所の新設は費用と時間がかかり、雑居は犯罪指南の温床となる。そこでマレーシア政府は、この悪循環を断ち切るために戦略と組織の重点を変えるしかないと悟った。この目的のために頼ったのは国家ブルーオーシャン戦略サミットだった。サミットでは刑務所問題の創造的な解決策を探すにあたって、世界のベストプラクティスを参考にするのをやめる代わりに、業界の基本的な前提を探り出して再考した。それは、『犯罪者は全員、刑務所に入れなくてはならない』という業界としては当たり前の前提だ。その上で費用のかさむセキュリティの厳重な刑務所に代わるはるかに低コストで大きな効果を持つ選択肢を探した。そこで見つかったのは、国内の多くの軍事基地内には遊休地だ。軍事基地は当然にしてセキュリティは万全であり、裏を返せば受刑者を閉じ込めておくのに最適というわけだ。この遊休地は、全受刑者に占める比率が最も高い形犯罪者を収容するための低コストでセキュリティの厳重な施設への転用が可能だった。さらに、組織の構造の問題もあった。受刑者を更生させる上で重要な専門性は、刑務所を管轄する役所とは別の役所の管轄だった。従来、刑務所の職員が更生を担当していたが、彼らの専門は監禁と警備であり、教育、訓練、雇用ではなかった。これらは他の役所が対応する方がはるかに望ましかった。」

つまり、ブルーオーシャン戦略を実行するためには、その「創造的な視点」をもつこととともに、それを実現するために構成員に「実際に動いて」もらえるように組織を横断的にマネージすることが必要ということでした。

ここでふと思いついたことがあります。

それは、この視点は以前にご紹介した「バックキャスト思考」そのものではないかということです。

「ブルーオーシャン戦略」はかなり抽象的な概念だという認識が大勢を占めていると思われますが、このような事例ごとの具体的な解説が豊富な本書を読むことで、それが「バックキャスト思考」というスキルとも関連させることでより具体的な理解ができるようになるのではないかと思いました。

 

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