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世界大学ランキングの評価法についての課題

2019年5月6日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2019年4月29日)の日経電子版に「世界大学ランキング、評価法に疑問、活用は半数」という記事がありました。

その記事を以下に要約します。

「日本私立大学連盟(鎌田薫会長)が「私立大学の国際的なプレゼンス向上のために―世界大学ランキングの活用と課題」と題したリポートをまとめた。加盟大学を対象にしたアンケートでは、ランキングの活用で対応が二分したが、国が政策決定で活用することには6割が肯定的だった。リポートは、こうした結果から、「世界の高等教育で大学ランキングが既に活用されている現実を無視できない共通認識がうかがわれる」とする一方で、「ランキング自体には多くの問題があるとの指摘は非常に多かった」とも述べており、ランキングの問題点は(1)一律化の弊害(2)資料データの客観性と透明性(3)倫理的問題――にあると整理した。具体的な活用法(複数回答)としては、「大学改革のベンチマーク」(31校)が最多で、「協定校の参考情報」(20校)、「学生の送り出し先の参考情報」(16校)、「受け入れ学生の参考情報」(11校)と続いた。個別記述ではランキングを評価する意見もあった半面で疑問や不信の声も相次いだ。」

この記事からは、日本の大学がその大学改革のお手本として世界のどの大学を目標にするのかという視点と提携先をどこにするのかの情報収集としての視点の二つを見て取ることができます。

私は、日本の大学が、後者の視点からこの世界ランキングを活用するということについては特に問題はないように思いますが、前者である「お手本」とすることにはかなり問題があると考えます。

というのも、この土俵がどうしても「グローバルスタンダード」前提となっていること、特に、使用言語が「英語」を前提として評価がなされるため、使用言語が「日本語」である我が国の大学が、その土俵を意識するならば、まずは本質的な成果云々の前に、言語という「プロセス」上のハードルをクリアする必要が出てきてしまうからです。

世界ランキングの評価基準を以下に添付します。

  • 教育(学習環境)
  • 評判調査
  • スタッフ対学生比
  • 博士と同窓生の比率
  • 博士後期課程への就職率
  • 機関所得
  • 研究(量、収入、評判)
  • 評判調査
  • 研究収入
  • 研究生産性
  • 引用(研究の影響)
  • 国際的な見通し(スタッフ、学生、研究)
  • 国際学生と国内学生の比率
  • 国際・国内スタッフ比率
  • 国際協力
  • 産業所得(知識移転)

 

日本は、その多くの大学がグローバル言語である「英語」ではなく母語である「日本語」を中心使用言語として研究を行っている世界でも数少ない国です。

このことについては、このブログにおいても何度もその「メリット」について述べてきました。そして、この記事においても次のような指摘によってその重要性についても触れられています。

「一律化の弊害で指摘したのは、ランキングが大学の多様性を評価できない点だ。世界の大学は歴史・社会・文化・経済・言語などで多様な背景と性格をもち、設置目的も設置形態も規模も異なる。国によって公財政支援のあり方も様々だ。」

日本の大学が世界で非常に珍しい英語を使用しないで世界的にインパクトのある研究を行っているという事実は、このグローバル化社会における「多様性」の維持においては大きな可能性を秘めていると言えるというわけです。

ただ、その多様性の維持と研究における情報獲得および情報拡散の威力の維持は完全にトレードオフの関係にあることも認識しなければなりません。

グローバル言語で研究をしていれば世界中の優秀な人材をすぐに取り込むことも可能ですし、研究が英語で行われていれば当然にして論文は全て英語で書かれるわけで、引用数も当然にして多くなるというものです。

つまり、世界ランキングの評価基準の中にある「国際学生と国内学生の比率」「国際・国内スタッフ比率」「国際協力」や「引用」などは研究を日本語を中心に利用して行っているいる以上圧倒的に不利にならざるを得ません。

ですから、この日経の記事が指摘している「多様性」の視点が、世界ランキングにおいて評価基準として導入されるようになれば、日本がこのトレードオフのバランスをとることができるようになり、圧倒的不利な現状をかなり改善できると思うのです。

後は、そもそも「教育(学習環境)」の現状を地道に改善することです。

私が米国留学した今から20年も前の時点ですでにアメリカの大学の図書館は当たり前のように24時間開館していました。

このような点こそ、日本の大学が他の国の大学のベンチマークすべきと思います。

多様性を維持しながらも、まだできることはあるはずです。

 

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