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中抜きによる経済効率化は悪か

2021年9月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

非常に興味深い内容が満載だったので、三回にわたり「DXとは何か」からテーマをいただいて書いてきましたが、今回が最終回です。

最終回のテーマは「中抜きによる効率化」です。

DXが単なる情報化やIT化といった技術の問題ではなく、「社会や制度をこう変えるという意思」の問題だということが本書の最大の主張なのですが、それでも、その変えることの直接的な意味合いは、今まで人の手を介して行っていた労働を技術によって置き換えて、すなわち「中抜き」によって「効率化」することです。

そして、それが進めば、少なくともその労働を担っていた人からはDXが「悪」であるとみなされるのは当然の流れです。

本書では、この経済の効率性と労働力の提供側との根本的なコンフリクトについて著者の考えが書かれていましたので以下にご紹介したいと思います。

「アマゾンなどがいい例だが、IT技術によって中間層がなくなるということは、中間層が効率化できなかったからこそ存在していた労働が必要なくなるということであり、その流通マージンの必要がなくなるということはその職で得ていた賃金が消えるということでもある。その分安くなるのは消費者としてはうれしいが、そのことが言葉通り所得の中間層を圧縮し、米国を筆頭にネット化が進む先進国で貧富の差を拡大する傾向の根本原因である可能性は高い。」

ここまでは、「中抜きによる経済効率化」のデメリットについて世間一般に言われていることそのもので何ら著者のオリジナリティが光っているものではありません。

しかし、著者は次のように続けます。

「一方、この情報流通コストの極端な低下が、海外生産者と消費者を近づけることで、発展途上国が儲けるチャンスの元にもなっている。国内の貧富の差は大きくなるが、一方で国と国との貧富の差を小さくする動きもあるという。この変化は一概には否定できないし、否定したところでより安い供給に需要が流れる以上、恣意的に止めるのは不可能だ。結局はこの変化の中で、いかに悲劇を最小化するかを模索するしかない。」

つまり、DXが、競争の舞台を国ではなく世界にまで広げることで「人材の能力」のみが貧富の差の要因となる時代を作り出すということのようです。

このことは、今まで先進国日本で育ってきた私たちにとっては、確かに「脅威(悪)」のようにとらえてしまいがちですが、またここで「社会や制度をこう変えるという意思」というDXの本質への理解を問われているように思いました。

 

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