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「人と違うこと」をするには

2016年9月11日 CATEGORY - 代表ブログ

人と違うこと

皆さん、こんにちは。

このブログで何度も取り上げさせていただいている一橋大学の楠木教授の本ですが、今回ご紹介するのは、彼の著書ではなく、ペンシルバニア大学のアダム・グラント教授の「ORIGINALS 誰もが『人と違うこと』ができる時代」の監訳本です。

私は翻訳本が大嫌いだということもこのブログでお伝えしているのですが、本書は楠木教授が「翻訳」者ではなく「監訳」者です。つまり、この本の日本語での出版に楠木教授が最終責任を負っているということです。

読んでみましたら、それはもちろん、ご自分の著書ではないため、臨場感というか迫力という意味では、少し物足りなさを覚えますが、いわゆる翻訳本独特の回りくどさがなかったという意味では、さすがだと思いました。

しかも、内容についても楠木教授お得意の普通の人が当たり前すぎて素通りしてしまうようなことに対して、深い洞察からくる納得を提供してくれるものとなっています。

今回、本書の内容から取り上げたいテーマは、「人と違うことを行うこと」の難しさです。

本書では、次の疑問が提示されています。

かつて天才児と呼ばれたような子供が長じて、世界を変えるような成功を成し遂げることはほとんどないのに対して、そのような成功は、ほとんどの場合、教師に評価されない「問題児」と呼ばれるような子供が長じて成し遂げるのはなぜかというものです。

ということは、視点を変えると、一般的な教育の現場で教師は、創造性の高い児童を冷遇してしまう傾向にあるということです。

神童と呼ばれるような人は恵まれた才能によって、訓練によってスムーズに技術を身に付けていきます。そして、当然のことながら、教師や他人の評価を受けるため、そのほとんどが既存のルールの中で非常に居心地の良い状態を得られることになります。

しかし、問題児と呼ばれるような人は、多くの場合、自分に自信をなくし社会的に不遇な状態を余儀なくされることになりますが、その中の一部は自分独自のルールを作る方向に自らを追いやることで、世界を変えるような圧倒的な成功を成し遂げる可能性が生まれてくることになるというわけです。

かつて、医者仲間に「ジャマナカ」と呼ばれていた山中教授のIPS細胞の開発成功や、卒業してから何十年後かの同窓会での「なぜあの人がこんなに出世を?」という現象はこのような仕組みで起こっていたということです。

ただし、勘違いすべきでないのは、既存のルールの中で世界を変えるほどではないが一定以上のレベルで成果を出せる人々がいるからこそ、世界は円滑に回っていることは確かだということです。

この大部分の安定の中で、「世界を変える」という不安定な動きを作り出すというのは、考えてみれば、既存のルールの枠外でしか起こらないのは当たり前です。

だからこそ、一般的な教育でそのような枠外のことを意図的に発現させようとすること自体が、根源的に困難なことだという認識はしておくべきだとは思います。

ただ、そんな認識の中ではあっても、自分の子供が「この子は他人と同じことができません!」という評価を受けたときに、「ニヤ」っとできる親でありたいなとは思いました。