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人口減少に負けない思考法

2021年3月28日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

予測が困難な時代にあって、唯一と言っていいほど確実な予測が可能な分野が「人口予測」だと言われます。

この「人口予測」という分野において、日本では確実に「人口減少」しかも、世界が経験したことのない異次元の「人口激減」が起こると予想されていることについては皆さんもご承知の通りだと思います。

この「人口減少」の中にあって、私たち日本人がどのように対処していけばよいかについて書かれた「未来を見る力 人口減少に負けない思考法」という本を読みました。

著者は作家でジャーナリスト、そしてその名もズバリ、「人口減少対策総合研究所」の理事長でもある河合雅司氏です。

上記の通り、日本は世界が経験したことのない異次元の「人口激減」が避けられないわけで、まさにこの国の未来には絶望的な見方しかできそうにないのですが、そんな中でも著者は本書において絶望的な議論に終始しているわけではありません。

この絶望的な状況の中でも、日本が前向きに未来に向かっていく対処法を提案してくれています。

その対処法とは、コストばかりかかって効果がない「少子高齢化対策」をきれいさっぱり諦め、「戦略的に縮む」という考えで前に進むというものです。

本書では、様々な社会問題において個別に「戦略的に縮む」方法論をケーススタディー的に提示してくれていますが、その中で私が最も説得的だと思ったのが「企業を戦略的に縮ませる」という方法です。

以下、その部分についての記述を要約します。

「日本全体として売上の拡大を求め続ける『薄利多売』の発想を捨て、働き手一人当たりの生産性の向上と高付加価値化によって『利益高』の拡大を追求する考えにシフトするのだ。それには、時代の変化の中で無用になった業務や商習慣を容赦なく廃止する。その典型例が『終身雇用制』だ。毎年若い働き手が激減していく時代には、若手社員を丁稚奉公のように低い給料で働かせることは不可能で、否が応でも優秀な人間には高給をそうでないものには年齢に関係なく退場を迫る形をとる欧米のような労働の流動性を高めるようにせざるを得ない。しかし、これではただでさえ少ない若い人材を企業間で奪い合う形となってしまい、全体として非常に不安定となってしまう。そこで、各企業が若手人材を『拠出』しシェアするのである。争奪戦に参戦して一時的に囲い込みに成功しても、ステップアップのためだとして退職されてしまうのでは、元も子もなくなる。それよりも、多くの企業が協調してプロジェクトチームをいくつも創設し、それぞれの有望な社員を出向させるような形で仕事を任せるのだ。実際すでに、パナソニック、NTT、トヨタなどの若手社員が企業の枠を超えてコミュニティを作り、新たなサービスを生み出そうとする『ONE JAPAN』という団体が存在している。」

「企業」という存在があるから、労働の流動性を目的とする「リストラ」にマイナスイメージがつきまとってしまうのです。

この考え方がもっと進めば、企業が社員を抱えるという概念ではなく、フリーランスをプロジェクト単位で活用する、つまり100%仕事に人材をあわせることができ、ひいては「企業」概念自体の消滅にもつながるかもしれません。

企業は、それが「組織」であり、その組織を維持する目的のために多くの「無駄」が生じることでその生産性が低下してしまうものです。

「働き手一人当たりの生産性の向上と高付加価値化によって『利益高』の拡大を追求する」という目的を達成するためには、「企業」概念自体の消滅につながるかもしれないこのような取り組みが、最も合目的的なものではないかと思いました。

「人口激減」を世界で最も早く経験する日本が、雇用の流動性を当たり前のこととして何の迷いもなく「働き手一人当たりの生産性の向上と高付加価値化によって『利益高』の拡大を追求する」ことができる働き手ばかりになれば、「人口減少」を良し悪しの問題としてとらえることから卒業できるようになるかもしれません。

 

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